赤湯で、デラウエアに賭けた醸造家
YellowMagicWinery(イエローマジックワイナリー)は、山形県南陽市赤湯の造り手です。運営は株式会社グローバルアグリネットのワイナリー部門。名前は「黄色魔術醸造所」の意味で、「アジア、そして日本人の感性に響く」日本ワインを掲げています。
醸造家は岩谷澄人さん。公式サイトの経歴によれば、1965年に青森県西津軽郡深浦町に生まれ、1987年にアパレルメーカーへ就職。1990年からぶどう栽培とワイン造りに携わり、滋賀のヒトミワイナリー、大阪の島之内フジマル醸造で経験を積みました。28年にわたって造ってきたのは「にごりワイン」。その理念を「足さず 引かず」と書いています。
2018年に赤湯字西町871番1に会社を設立し、2019年9月27日に醸造免許を取得。東北生まれの自分が次を目指す場所として、ぶどう産地として歴史のある南陽市を選びました。とくに生食用のラブルスカ系品種に「日本固有のDNA」を感じると書き、デラウエアを中心に据えています。2021年ヴィンテージからは、原料がすべて山形県産になりました。
4つの畑、合わせて約94a
公式サイトの「ブドウ圃場」には、南陽市内の4つの畑が載っています。
- 第1上野圃場(Daiichi WANO Vineyard)(上野地区、34.08a、垣根)── もとは休眠していた桃園。2018年秋に桃の根を掘り起こし、2019年4月に苗484本を植えました。メルロー、シャルドネ、マスカット・ベーリーA、モンドブリエ、ビジュ・ノワール、アルバリーニョ。生食用に棚で育てることの多いベーリーAを、垣根の密植で育てて凝縮した実をとり、「日本のガメイ」を目指す畑です。
- 第2上野圃場(上野地区、20.22a、垣根)── 2020年秋に休眠農地を畑に変え、2021年4月にシャルドネとガメイを植えました。
- 金山圃場(金山地区、30.1a、棚・短梢剪定・ビニール被覆)── デラウエア。栽培していた菊地さんから2018年末の剪定で引き継ぎ、長梢から短梢に切り替えて収量を絞っています。
- 大沢山圃場(大沢山地区、9.19a、棚・長梢剪定・ビニール被覆)── 自社所有。デラウエア、スチューベン、シャインマスカット。白竜湖を見下ろす南向きの斜面で、雲海が出る高台です。
合わせて約94a。ほかに、山形市や南陽市の農家と組んだ契約栽培のぶどうも使います。
農薬を撒かず、ビニールの「傘」をさす
公式サイトの「僕達の考え」によれば、棚仕立ての畑はすべて、棚の上だけをビニールで覆っています。側面は開けたままなので風が抜け、温室とは違う、「傘」をさす感覚だといいます。病気の原因のほとんどは雨と考え、雨よけによって農薬を撒かない栽培を続けています。有機栽培で使えるボルドー液や硫黄合剤も撒きません。根には雨も必要だとして、ビニールをかけるのは開花の直前、ほかの農家より2か月近く遅い時期です。
狙いは果皮を厚く、果梗を太くすること。デラウエアはすべて種ありです。果皮や果梗に棲む酵母を生かすため、ワインはすべて自然発酵。仕込みのあいだは醸造所を10℃以下に保ち、2週間ほどかけて発酵が始まるのを待ちます。皮や梗ごと漬け込む醸しの仕込みは平均40日、長いものは合計4か月発酵させたワインもあります。健全な発酵が見込めない年のために培養酵母も用意している、と書き添えているところに、30年近く醸造してきた人の現実感があります。
一本ずつ、名前に物語がある
ラインナップは20銘柄(公式サイト掲載)。どれもオープン価格で、アルコール度数は11%前後、1銘柄500〜1,300本ほどの少量生産です。
- 『GROOVE DELA YARO 2025』── 山形市本沢で活動する「TEF(ぶどうと活きる)」グループと、南陽市上野で郵便局に勤めながら亡き父の畑を守る高橋さんのデラウエアを、醸しで仕込んでブレンドしたオレンジワイン。名前は「デラ野郎」、モチーフは1964年東京オリンピックの重量挙げ。750本、酸化防止剤無添加。
- 『ASHID DELA 2025』── 金山地区で農薬を撒かずに育てたデラウエアを、除梗も破砕もせず足で踏み、120日間のセミ・マセラシオン・カルボニックで。プラムや梅の香りが特徴と紹介され、熟成させてもおいしいとしています。500本。
- 『TEF no デラプライド 2025』── TEFの完熟デラウエアを30日間醸し、3年使ったフレンチオーク樽で最終発酵、7か月熟成。TEFシリーズ初のスティルワインで、焼き鳥やお好み焼きと合わせたい一本。1,000本。
- 『ORDINARY ROUGE 2024』── ベーリーA主体にスチューベン。90日以上のコールドマセラシオンを経た、冷やして飲む軽やかな赤。開けたとき少し「シャワッ」とすることがあります。1,300本。
- 『WANO Vineyard Field Blend 2023』── 自社の上野圃場の8品種をまとめて低温で混醸した、「畑を味わう」赤。900本。
ワインを飲み始めた人なら、ひとりで飲む夜に冷やした『ORDINARY ROUGE』を。デラウエアの醸しの個性を知るなら『GROOVE DELA YARO』から入るのがわかりやすい選び方です。
醸造所は訪ねられない。酒販店で一本を探す
公式サイトには「店舗がありませんので直売していません」「ネットショップも行っていません」「ワイナリー見学は不可」と明記されています。所在地(特定商取引法に基づく表記)は山形県南陽市赤湯字西町871番1ですが、訪ねて買える場所ではありません。
ワインは、公式サイトの「取扱い店様」に載る酒販店で扱っています。2024年3月22日時点の一覧には、北海道から沖縄まで全国の店が並び、地元の南陽市では結城酒店、山形市では山形葡萄酒屋、東京では信濃屋 ワイン館やウィルトスなどの名前があります。入荷のタイミングや在庫は各店に確かめてください。
南陽市には、明治から続く酒井ワイナリー、グレープリパブリック、金渓ワイン 佐藤ぶどう酒、大浦葡萄酒などの造り手も集まっています。山形の産地の全体像は産地:山形と第74講 山形完全編でまとめています。


