町の農家が立ち上げたワイナリー
MEMURO WINERY(めむろワイナリー)は、北海道河西郡芽室町中美生2線44番地3にあるワイナリーです。十勝平野の西側、日高山脈のふもとの町で、公式サイトによれば醸造所は、町民の憩いの場として親しまれてきた町有地「新嵐山スカイパーク」の一画に建っています。
運営はめむろワイナリー株式会社。公式サイトの会社案内によれば、設立は2019年2月1日、代表取締役は尾藤光一さん、醸造責任者は尾原基記さんです。芽室町の「新嵐山スカイパーク用地活用事業プロポーザル」で採択され、地域の資源を生かして地域と観光の振興に役立つ事業として建設が始まりました。北海道庁の資料(2026年2月現在)は、芽室町の公民連携事業として2020年に始まり、ぶどう生産農家が共同で立ち上げたワイナリーと紹介しています。
北海道新聞は2020年10月、新嵐山スカイパークに醸造所が完成し、10月1日に果実酒製造免許を受けたと報じました。十勝毎日新聞によれば、2021年7月15日に店頭での一般販売が始まり、それまではクラウドファンディングやサポーターズクラブなどでの予約販売だけでした。
氷点下20度の土地でヨーロッパ系品種に挑む
公式サイトの「ブドウ畑」のページによれば、十勝は冬に氷点下20度を下回り、雪が少ないため、寒さに弱いぶどうの樹を育てるのが難しい土地です。これまでの十勝のワイン造りは、山ぶどうから改良した品種を使うか、道内の暖かい地域のぶどうを運んで仕込むのが一般的だったといいます。
そこで2016年、畑作農家として培ってきた「土づくり」の視点で、ぶどう栽培に取り組み始めました。冬越しの技術も開発し、日高山脈より東では初めてヨーロッパ系品種の栽培にこぎつけたと公式サイトは書いています。北海道庁の資料によれば、主力は清見・山幸・清舞という十勝生まれの品種で、ヨーロッパ系品種にも挑戦中。栽培面積は関係者の畑を合わせて10.4haです。白ワイン『ひろがる』には芽室町産のシャルドネ、ケルナー、ソーヴィニヨン・ブランが、赤『かがやく』にはツヴァイゲルトレーベとピノ・ノワールが使われています。
「畑ごとのワイン」と醸造所
掲げる言葉は「ブドウの品質を超えるワインを造ることはできない」。同じ品種でも畑が変われば個性が変わるという考えから、それぞれの生産者が育てたぶどうを別々に仕込む「畑ごとのワイン」を造っています。北海道庁の資料によれば、山幸と清舞は生産者の畑ごとに個別に仕込み、ラベルに生産者の名前を記します。
公式サイトによれば、醸造所には11種類・42本のタンクがあり、ぶどうとワインの量に合わせて使い分けて、発酵後はタンクを満量に保って酸化を防ぎます。果実を潰さずに梗と分ける高性能の除梗機をアジアで初めて導入し、工程ごとに成分を検査してデータを積み上げています。会社案内では、建物は木造平屋建てで建築面積466㎡、タンクの総容量は18.7kL(ワイン25,000本相当)、木樽の総容量は3.6kLです。
生産者の名前が入る一本
公式サイトの「リリースワイン」から、主なものを挙げます。
- 『かなえる』(赤) ── 一人の生産者の畑の山幸、または清舞だけで造る「畑ごとのワイン」。ラベルには「BITO KOICHI」「KIKUCHI HIDEKI」「KURODA YOSHITSUGU」「OGAWA YUTAKA」など、生産者の名前がローマ字で入ります。
- 『つながる』(赤) ── 山幸・清舞・清見を合わせた一本。北海道新聞によれば、2023は女性審査員によるワインコンペ「サクラアワード2026」でダブルゴールドと「焼き鳥に合うワイン賞」を受けました。
- 『かがやく』2023(赤) ── 清見48%、山幸26%、ツヴァイゲルトレーベ14%、ピノ・ノワール12%。
- 『ひろがる』2025(白・辛口) ── 芽室町産のシャルドネ66%、ケルナー18%、ソーヴィニヨン・ブラン16%。
- 『たのしむ 清見ロゼ』と『よろこぶ 山幸ロゼスパークリング』 ── 清見のロゼと、山幸の微発泡ロゼ。
- 『あわせる』(赤、山幸・清見) ── 2027年に北海道十勝で開かれる全国和牛能力共進会を記念して造られた、和牛に合わせるための一本。2026年8月29日に発売されました。
このほか、山幸・清舞の『大地の序章』(十勝毎日新聞によれば2021年の一般販売時に2019ヴィンテージが並びました)、清見とツヴァイゲルトレーベの『豊穣の序章』などがあります。ワインは直営ショップとオンラインショップ、北海道庁の資料によれば主に十勝管内の小売店で買えます。年会費制の「サポーターズクラブ」もあります。
ショップと見学通路
会社案内によれば、醸造所には直営ワインショップと工場見学通路が併設されています。ショップの入口は建物の東側(道道55号清水大樹線側)、見学通路の入口は西側(新嵐山スキー場側)。営業は平日の10:00〜16:00で、夏期は土日にも営業日を設けています。北海道庁の資料では、見学通路から自由に見学できるとされ、十勝総合振興局のモデルルート資料では、ガラス越しに醸造所を見学できると紹介されています。ぶどう畑の見学は、十勝総合振興局のページで「要相談」です。
ショップで試飲ができるかは、公式サイトでは確認できませんでした。イベントへの出店や仕込みの時期にはショップを休む日があり、公式サイトの「お知らせ」で告知されます。なお、芽室町の資料によれば、新嵐山スカイパークは指定管理者の経営破綻で2023年10月から利用を休止し、町が再生の構想をまとめているところです(2024年度に公園機能の一部とメムロスキー場は再開)。レストランや宿泊施設はありません。
行き方
公式サイトによれば、車でJR芽室駅から15分、JR帯広駅から40分、とかち帯広空港から35分、道東自動車道の芽室ICから25分です。駐車場については、公式サイトでは確認できませんでした。
同じ十勝では、山幸と清舞を生んだ池田町の十勝ワインや、帯広市の相澤ワイナリーと合わせて訪ねることもできます。北海道の産地の全体像は第68講 北海道完全編、ワイナリーを訪ねるときの心得は第51講 ワイナリー訪問で整理しています。
