日本初の「シェアするワイナリー」
Hokkaido SPACE Wineryは、北海道空知地方の長沼町にあるワイナリーです。公式サイトによれば、新千歳空港から車で20分ほどの場所に2023年に誕生した、日本で初めて醸造設備を共有できるワイナリー。北海道庁の「北海道内のワイナリー紹介」(空知エリア)でも、日本初の「シェアワイナリー」として紹介され、醸造免許の取得は2023年とされています。
公式サイトは、生まれた理由をこう説明しています。日本のワイナリーは増え続けているが、新しくワイン造りを始めるときの壁になるのが醸造設備にかかる莫大なコスト。そこで醸造施設や設備を共同で使い、初期投資のリスクを抑えながらワイン造りを始められるようにする。そして、造り始めてから必ず出てくる不安や疑問を、周りの経験者と助け合いながら解消していく——。公式サイトはこれを「知識と経験の集積地」と呼び、小さなワイナリーでも続けられるワイン造りと、技術・知識の共有によって、日本ワインの品質向上と市場の拡大を目指すと書いています。北海道庁の資料は、国内だけでなく海外からも経験のある造り手が集まる場として、人が集まりやすい長沼町に置かれたと説明しています。
専用の部屋と、共有する醸造機器
公式サイトの「ワイナリーについて」によれば、利用者にはそれぞれ専用のスペースがあり、フルボトル換算で約3,000〜5,000本を醸造できる広さです。各部屋は温度調整ができ、自分たちのペースで発酵や熟成を進められます。専用スペースを持つことで、各自が「自分たちのワイナリー」として関係者を案内できる、という考え方です。
共有スペースにそろう機器も、公式サイトに一覧で載っています。
- 除梗機、プレス式圧搾機2台
- 100L〜1,000L程度のステンレスタンク各種(ハンドリフト・フォークリフトで移動可)、発酵槽に使える樹脂タンク
- 移動式チラー(部屋ごと暖めることも可能)
- 半自動リンサー、フィラー、コルカー、シャンパン王冠打栓機、ラベラーなど瓶詰めの機器
- 瓶内二次発酵(シャンパーニュ方式)のスパークリングワインを造る設備
- ドライアイス、液化炭酸ガス、窒素、アルゴンガス一式
料金は年間契約で、追加の設備費用はかからず(消耗品は各自負担)、1本ごとの委託醸造費も不要とされています。機器は、国内外のワイナリーで経験を積んだ醸造家が選んだものだと公式サイトは書いています。
北海道庁の資料では、栽培面積は1.5ha。主な醸造品種はシャルドネ、ピノ・ノワールなど(2024年作付け予定)とされています。
参加する造り手
公式サイトの参加ワイナリー一覧(順不同)に並ぶのは、MARO Wines、KOYAMARO®、FuSa vineyard。部屋の利用のほか、将来の部屋利用を見据えた委託醸造も受けており、「委託醸造 複数」と記されています。
サポート事業のページには、醸造家の麿直之(まろ・なおゆき)さんの経歴が載っています。2014年に外資系製薬会社のMRを辞めて醸造家の道に入り、北海道のワイナリーの立ち上げから醸造責任者を務めながら、冬は南半球で修業。2021年にUC Davisのワイン醸造の認定プログラムを修了し、自身のブランドMARO Winesを立ち上げて北海道でワインを造り、2023年から販売しています。これからワイナリーを建てたい人や、栽培・醸造の技術支援を受けたい人には、JAPAN WineGrowersを通じたサポートを案内しています。
主なラインナップは、北海道庁の資料でも「各ワイナリーによる」とされ、ワインは参加する各ブランドのものとして出ていきます。銘柄や購入方法は、それぞれのブランドの情報を確かめてください。
訪ねる前に:一般公開はしていない
公式サイトのアクセス欄には、「現在一般公開はしておりません」と書かれています。一方、北海道庁の資料(R8.2現在)では、直売所あり・訪問見学可で、いずれも事前連絡が条件とされ、2階のセラードアをイベントスペースや直売所として使っていると紹介されています。予約なしで立ち寄れる場所ではないので、訪ねたい場合は公式サイトのお問い合わせから必ず事前に相談してください。条件は変わることがあります。
所在地は夕張郡長沼町東9線南5番地。公式サイトによれば、新千歳空港から一般道で約20分、札幌市内からは札幌南ICから約30分です。2026年8月には、シェアワイナリーの取り組みが北海道新聞に取り上げられたと公式サイトのお知らせにあります。
長沼・空知南部のワインの中で
同じ長沼町には、「日本一小さなワイナリー」と呼ばれたマオイワイナリーを前身とする馬追蒸溜所があります。醸造を引き受ける場という点では、岩見沢市のカスタムクラッシュワイナリー10R Wineryが先輩にあたり、近くには千歳市の千歳ワイナリー、安平町のアーロムワイナリーもあります。北海道の産地全体は北海道の産地ガイドと第68講 北海道完全編にまとめています。
