
アンデスが育てる、新世界標高と陽光の南米
南米の二大ワイン大国、チリとアルゼンチン。両国の背骨をなすのがアンデス山脈です。標高が高く、遮るもののない強い陽光、乾いた空気、そして雪解け水——この環境が、病害の少ない健全なぶどうと、凝縮した鮮烈な果実味を生みます。第12講カリフォルニアに続く、新世界の実力派です。
把握のコツはシンプル。「アルゼンチン=マルベック」「チリ=カベルネとカルメネール」「両国=驚きのコスパ」。品種名で選べる分かりやすさも魅力。まずはアルゼンチンの主役から。
マルベックの新天地メンドーサ
アルゼンチンを象徴する黒ぶどうがマルベック。もとはフランス・ボルドーやカオールの品種でしたが、標高の高いメンドーサで真の花を咲かせました。プラムやブラックベリーの豊潤な果実味に、スミレの香り、ビロードのようなタンニン。力強くも滑らかで、「飲んで分かる」魅力にあふれます。

黒系果実・スミレ・チョコ。まろやかなタンニンで、赤身肉(アサード)に最高。赤・フルボディ
ウコ・ヴァレーなど標高1,000m超の畑も。昼夜の寒暖差が、凝縮感と鮮やかな酸を両立させる。
アルゼンチン土着の芳香白。マスカットのような華やかな香りで、辛口。食前酒にも。白
乾いた空気で病害が少なく、有機・自然な栽培もしやすい。健全なぶどうが安定した品質を生む。
「里帰り」しないボルドー品種 マルベックは第5講ボルドーではすっかり脇役に。ところが海を渡ったアルゼンチンで、主役級のスターに大変身しました。品種が最高の土地に出会うと化ける——ワインの面白さが詰まった物語です。
縦に長い、多彩な谷カベルネとカルメネール
南北に細長いチリは、気候の縦のグラデーションが魅力。西は太平洋、東はアンデス、その間の谷ごとに個性が分かれます。看板は、マイポなどで生まれる世界水準のカベルネ・ソーヴィニヨン。凛とした果実味とミント感のある、コスパ抜群の赤です。
マイポ・ヴァレーの銘品。ボルドー型の骨格に、チリらしい果実味とミント香。赤
かつてボルドーで絶えたとされる品種が、チリで「発見」された。ピーマンやスパイスの独特の香りを持つ、チリの顔。赤
海に近いカサブランカ等で、爽やかなソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、ピノも。白
「よみがえった」ボルドー品種 カルメネールは、害虫フィロキセラで第5講ボルドーから姿を消した品種。長くメルローと混同されていましたが、1994年にチリで再発見されました。旧世界で絶えた品種が新世界で生き延びる——ワインの歴史のロマンです。
選ばれる理由コスパ・分かりやすさ・安定
手頃な価格帯で本格的な味わい。「日常の一本」として世界中で選ばれ、輸入ワインの定番に。
ラベルに品種名が明快。「マルベック」「カベルネ」と書かれ、味の想像がつきやすい。
乾いた気候で天候に恵まれ、当たり外れが少なめ。ハズレをつかみにくい安心感。
スーパーで出会える新世界 第16講オーストラリアと並び、身近なお店で本格ワインに出会えるのが南米の強み。「まず何を飲めばいい?」への、力強くて分かりやすい答えです。
アンデスの実力派力強く、手頃に
南米はアルゼンチンのマルベック・チリのカベルネとカルメネール・アンデスの標高、この三点で気持ちよく選べます。最初の一本は、豊潤で分かりやすいメンドーサのマルベックか、コスパ抜群のチリのカベルネ。赤身肉と合わせれば、その力強さが際立ちます。ちょっと冒険するなら、チリの個性派カルメネールもぜひ。
新世界を巡ってきました。次は南半球のもうひとつの雄、喜望峰の国へ。独自品種ピノタージュと、価値ある白の宝庫——南アフリカ完全編。ヨーロッパと新世界が交わる、個性豊かなワインの国へご案内します。
