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コラム / 季節

鍋の季節に合うワイン — 寄せ鍋は甲州、すき焼きは軽い赤、キムチ鍋はやや甘口の白と泡

牛肉と焼き豆腐、春菊を並べたすき焼きの鍋
牛肉と焼き豆腐、春菊を並べたすき焼きの鍋 / Photo: “Sukiyaki 01” by ajari, CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
このコラムの要点

鍋に合うワインは、鍋つゆの味で選び分けます。出汁が主役の寄せ鍋には甲州のような穏やかな辛口の白、醤油と砂糖のすき焼きには渋みの穏やかな軽い赤(マスカット・ベーリーAなど)、唐辛子の効いたキムチ鍋にはほのかに甘い白か、冷やした泡。一本で通すなら、辛口寄りのスパークリングがどの鍋にも寄り添いやすい選択です。

この記事の目次

鍋の夜は、つゆの味でワインを選ぶ

11月に入ると、食卓に土鍋やすき焼き鍋が出る日が増えてきます。鍋の日にワインを開けるなら、具材よりも先に鍋つゆの味を見ると選びやすくなります。出汁と塩、ポン酢で食べる淡い鍋なのか。醤油と砂糖で甘辛く煮る鍋なのか。唐辛子の効いた辛い鍋なのか。この3つで、合わせやすいワインの方向がはっきり分かれます。

考え方の軸は、料理とワインの味の強さと方向をそろえることです。淡い出汁に重い赤を合わせると、ワインのほうが前に出てしまいます。甘辛いたれに軽すぎる白を合わせると、ワインが水っぽく感じられがちです。

鍋つゆの味合わせやすいワイン
寄せ鍋・水炊き出汁・塩・ポン酢甲州など穏やかな辛口の白、辛口の泡
すき焼き醤油と砂糖の甘辛さ、牛の脂、卵渋みの穏やかな軽い赤
キムチ鍋唐辛子の辛さと酸味、豚の脂ほのかに甘い白、よく冷やした泡

ここからは、それぞれの鍋に一本ずつ、造り手の公式資料で確かめられるワインを挙げていきます。

寄せ鍋・水炊き — 出汁の夜は、冷やした甲州を

魚介や鶏、白菜、豆腐が入る寄せ鍋は、出汁のうま味が主役の鍋です。ここに合わせたいのが、山梨を中心に育つ日本の白ぶどう甲州。2010年、甲州は国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に登録され、日本固有のぶどうとして初めてワイン用の品種として国際的に認められました。山梨県の資料は、これにより「Koshu」とラベルに記してEUへ輸出できるようになったと説明しています。

マンズワインは、甲州の特徴を「透明感のある色調、フレッシュな柑橘系の香り、穏やかな酸味とほのかな苦味」と紹介しています。主張の強い香りではなく、出汁の繊細さに寄り添うタイプです。同社が地理的表示「GI Yamanashi」を取得した山梨のぶどうで仕込む『山梨 甲州』は、そうした甲州の姿をつかみやすい一本。同社は、甲州とマスカット・ベーリーAのきれいな味わいがシンプルで繊細な日本の食卓に合うとしています。

ポン酢で食べる鍋なら、柑橘の酸と白ワインの酸が同じ方向を向きます。ほのかな苦味は、春菊や白菜の青い風味と重なりやすいところです。鶏の水炊きや鱈の入った寄せ鍋の夜、湯気の向こうに冷えた白を一杯。鍋の温かさと、グラスの冷たさの対比も楽しめます。

すき焼き — 甘辛い割り下に、渋みの穏やかな赤

すき焼きは、鍋のなかでもとくに味の強い一品です。醤油と砂糖の甘辛さ、牛肉の脂、くぐらせる生卵のまろやかさ。この3つを受け止めるのが、果実味があって渋みの穏やかな軽い赤です。

日本で生まれた赤ワイン用のぶどうマスカット・ベーリーAを、マンズワインは「いちごのような甘い独特な香り」と「比較的穏やかな渋み」と説明しています。甘やかな果実の香りは割り下の甘みと方向がそろい、穏やかな渋みは卵でまろやかになった肉ともぶつかりにくいと評されます。この品種は、新潟県上越市の岩の原葡萄園の創業者・川上善兵衛が、1927年に「ベーリー」と「マスカット・ハンブルグ」を交配して生みました。

その岩の原葡萄園が、マスカット・ベーリーAと樽熟成で仕上げる代表銘柄が『深雪花 赤』です。品種が生まれた場所の一本を、すき焼きの夜に開ける。そんな選び方もできます。岩の原葡萄園は、赤ワインも冷蔵庫で軽く冷やして飲むことを勧めています。鍋を囲む部屋は暖まりやすいので、少し冷やしたところから始めると、最後まで香りがだれにくくなります。

割り下で煮るか、肉を焼いて砂糖と醤油をからめるかで、鍋の味の濃さは変わります。作り方ごとの選び分けは、すき焼きのペアリングのページにまとめています。

キムチ鍋 — 辛さには、ほのかな甘みと泡

キムチ鍋は、唐辛子の辛さに、発酵したキムチの酸味と豚肉の脂が重なる鍋です。渋みの強い赤は辛さと重なって刺激が強く感じられやすいと言われ、合わせるならほのかに甘みのある白か、よく冷やした泡が向く傾向です。

ほのかな甘みのある白を探すなら、ドイツの白が手がかりになります。たとえばリープフラウミルヒ。ドイツのワイン令は、これを「リースリング、ジルヴァーナー、ミュラー・トゥルガウ、ケルナーを70%以上使い、残糖がやや甘口(リープリッヒ)の範囲にある白」と定めています。ラインヘッセンのP.J.ファルケンベルクが伝統的な白ぶどうを合わせて造る『マドンナ リープフラウミルヒ』はその定番で、同社によれば1808年、ペーター・ヨーゼフ・ファルケンベルクが初めて「リープフラウミルヒ」を輸出しました。辛さの立つ鍋の日に、やわらかな甘みが口の中を落ち着かせてくれます。

甘みのある白が苦手なら、泡を選びます。スペインのカバの甘辛表示で「セコ」は、カバの統制委員会によると残糖が1リットルあたり17〜32g。辛口の「ブリュット」より甘みのある区分です。コドルニウの『クラシコ セコ』は、マカベオ、チャレッロ、パレリャーダの伝統3品種から造るカバで、公式はリンゴと白い花の香りと紹介しています。冷たさと泡が、辛さで火照った口をすっきりさせます。辛い料理全般の合わせ方は、辛い料理・エスニックのペアリングにもまとめています。

一本で通すなら — 泡で始めて、シメまで

持ち寄りの鍋や、何の鍋になるか決まっていない夜は、辛口寄りのスパークリングを一本冷やしておくと動きやすくなります。泡は出汁の鍋にも、脂のある鍋にも寄り添いやすく、乾杯の一杯から雑炊やうどんのシメまで通せます。

2本開けられるなら、乾杯は泡、鍋が煮えたら鍋に合わせた一本へ。寄せ鍋なら甲州、すき焼きなら軽い赤、キムチ鍋ならやや甘口の白。鍋の湯気と醤油の香りが立つ食卓では、ワインの香りが埋もれやすいので、注ぐ量を少なめにして、こまめに注ぎ足すと香りを楽しみやすくなります。

シメの雑炊やうどんは、具材のうま味が溶け込んだ、その夜でいちばん味の深いひと皿です。すき焼きのあとなら残しておいた赤を少し、寄せ鍋のあとなら甲州や泡を最後の一杯に。鍋の味が変わっていくのに合わせて、グラスの中身も少しずつ移していく。一本を決めきれない夜こそ、2本目を用意しておく意味があります。冷やし方の目安は提供温度(適温)、鍋全体の合わせ方は鍋料理のペアリングにあります。

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。飲酒運転は絶対にやめましょう。妊娠中や授乳期の飲酒は控えてください。お酒は適量を、ゆっくり楽しみましょう。

よくある質問

鍋に合うワインは白と赤のどちらですか?
鍋つゆしだいです。出汁や塩、ポン酢で食べる寄せ鍋や水炊きは、甲州のような穏やかな辛口の白が合わせやすい傾向です。醤油と砂糖で甘辛く煮るすき焼きは、渋みの穏やかな軽い赤(マスカット・ベーリーAなど)が寄り添います。迷ったら、どちらの鍋にも合わせやすい辛口寄りのスパークリングから始めるのが目安です。
キムチ鍋に赤ワインは合いますか?
渋みの強い赤は、唐辛子の辛さと重なって刺激が強く感じられやすいと言われます。キムチ鍋には、ほのかに甘みのある白(やや甘口のリースリングなど)や、よく冷やしたスパークリングのほうが合わせやすい傾向です。赤を選ぶなら、渋みの穏やかな軽いタイプにとどめておくと無難です。
鍋の日に一本だけ買うなら、何を選べばいいですか?
辛口寄りのスパークリングが、寄せ鍋・すき焼き・キムチ鍋のどれにも合わせやすい選択です。泡と冷たさが脂や辛さを流し、乾杯からシメの雑炊まで通せます。少し甘みのある泡がよければ、カバの甘辛表示で「セコ」(残糖1リットルあたり17〜32g)を選ぶ方法もあります。

出典・確認日

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公開: 2026-11-03 / 最終更新: 2026-11-03 / 編集: Vinotier編集部