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ワインガイド Vinotier

VINOTIER WINE COURSELEÇON XXXIV

第34講 深掘り

ジュラ&サヴォワ完全編

ブルゴーニュの東隣に、こんな秘境があった。酵母の膜の下で眠る黄色いワインヴァン・ジョーヌと、山のチーズの相棒サヴォワの白。アルプスの麓の個性派へ。

ヴァン・ジョーヌサヴァニャン山のチーズ
ジュラ&サヴォワ完全編のイメージ
ヴァン・ジョーヌの聖地シャトー・シャロンから見下ろす、ジュラの畑と村
シャトー・シャロン — 崖の上の村から、ぶどう畑のパッチワークを見下ろす。ここが「黄色いワイン」ヴァン・ジョーヌの聖地
— Prologue

アルプスの麓の、個性派たち小さな産地の大きな個性

第4講ブルゴーニュの東、山を越えたところに、知る人ぞ知る小さな産地があります。ジュラ——世界でも類を見ない「黄色いワイン」を生む秘境。そしてその南、アルプスの只中のサヴォワ——スキーリゾートと山のチーズの国。どちらも規模は小さいながら、ここでしか出会えない味を守り続けてきました。

近年は自然派(ナチュラル)ワインの聖地としても人気が沸騰し、パリや東京のワインバーでジュラの名を見ない日はないほど。把握のコツは三つ。「黄色いワイン=ヴァン・ジョーヌ」「土着品種サヴァニャン」「山の食卓との同郷合わせ」です。

— Vin Jaune

黄色いワインヴァン・ジョーヌ

ジュラの象徴がヴァン・ジョーヌ(黄色いワイン)。土着の白ぶどうサヴァニャンを発酵させたあと、樽をあえて満杯にせず熟成させます。すると液面に産膜酵母の膜(ヴォワル)が張り、その下で6年以上——目減りを補充せず、ゆっくりと熟成。こうして生まれるのが、クルミやカレースパイスを思わせる独特の香りを持つ、黄金色の辛口白です。

長い年月を経た、ヴァン・ジョーヌの古いボトルたち
時を超える黄色 — ヴァン・ジョーヌは驚くほど長命で、数十年単位の熟成に耐えると言われる。専用ボトル「クラヴラン」は620mlという独特のサイズ
サヴァニャンSavagnin

ジュラの魂というべき土着白品種。鋭い酸と力強さで、長い樽熟成に耐える。白

ヴォワル(産膜酵母)Voile

液面に張る酵母の膜が、酸化をゆるやかに制御しながら独特の風味を育てる。シェリー(第15講)と似るが、酒精強化はしない。

クラヴランClavelin

ヴァン・ジョーヌ専用の620mlボトル。「熟成中に目減りした分」を象徴する容量と語られる、遊び心ある伝統。

シャトー・シャロンChâteau-Chalon

崖上の村の名を冠する、ヴァン・ジョーヌ専用のAOC。この様式の頂点とされる聖地。白

コンテチーズという運命の相手 ヴァン・ジョーヌ×熟成コンテは、第27講ペアリングで学んだ「同郷合わせ」の最高傑作と名高い組合せ。どちらもジュラの山で生まれ、クルミのような香りが響き合います。鶏のクリーム煮(ヴァン・ジョーヌ煮込み)も郷土の定番。

— Jura

ジュラの引き出し泡から藁の甘口まで

ジュラの魅力はヴァン・ジョーヌだけではありません。アルボワを中心に、軽やかな赤から泡、珍しい甘口まで、小さな産地とは思えない引き出しの多さを誇ります。細菌学の父ルイ・パスツールが育ち、ワインの発酵を研究した土地としても知られています。

軽やかな赤Poulsard

土着のプールサールやトゥルソー、ピノ・ノワール。淡い色の、みずみずしい赤。自然派人気の中心。赤

クレマン・デュ・ジュラCrémant

瓶内二次発酵(第6講)の上質な泡。手頃な価格で、山の食前酒にぴったり。泡

ヴァン・ド・パイユStraw Wine

ぶどうを藁の上などで陰干しして糖を凝縮させる甘口「藁ワイン」。第19講の陰干しの仲間。甘口

「シェリーに似て非なる」を楽しむ 産膜酵母由来の風味は第15講酒精強化のフィノ・シェリーと通じますが、ヴァン・ジョーヌはアルコールを添加しない「素の白ワイン」。飲み比べると、製法の違いが香りにどう出るかを体感できます。

— Savoie

山のワインサヴォワ

ジュラの南、モンブランを望むサヴォワは、スキーと山のチーズの国。畑は山あいの斜面や湖のほとりに点在します。主役はジャケールをはじめとする土着の白。軽やかでキレがよく、アルプスの空気のようにみずみずしい味わいです。

山並みを背にした、サヴォワ・ミアンのぶどう畑
ミアンの畑 — 山々に抱かれたサヴォワのぶどう畑。冷涼な山の空気が、軽やかでキレのある白を育てる
ジャケールJacquère

サヴォワの代表白品種。軽く、辛口で、ほのかに山の草花。フォンデュの大定番。白

アルテスAltesse

「ルーセット」とも呼ばれる上級白。蜂蜜やアーモンドのコクを備え、熟成も楽しめる。白

モンドゥーズMondeuse

土着の赤。スミレとこしょうの、山らしいスパイシーで引き締まった味わい。赤

フォンデュとラクレットの相棒 とろけるチーズ料理に、サヴォワの白——これも「同郷合わせ」の教科書です。脂を切る鋭い酸と軽やかさは、チーズフォンデュ、ラクレット、タルティフレットの最高の相棒。スキー旅行の食卓そのままの組合せです。

— Recap

山が守った味秘境の二産地

この二産地は「黄色いワイン=ヴァン・ジョーヌ」「土着品種(サヴァニャン・ジャケール)」「山の食卓との同郷合わせ」で見通せます。入口には、手頃なクレマン・デュ・ジュラか、フォンデュに合わせるサヴォワのジャケールを。そして機会があれば、コンテチーズを添えてヴァン・ジョーヌを——世界のどこにもない香りに、きっと驚くはずです。

次回は憧れの図鑑へ。ブルゴーニュの心臓、神々の名を冠する村——銘醸図鑑「ヴォーヌ・ロマネ」。ロマネ・コンティを頂く特級畑の丘と、伝説の造り手たちをご案内します。

Santé, là-haut.

小さな産地には、大きな産地が失いがちな「土地の顔」が残っています。ジュラとサヴォワは、その最良の証人です。

写真クレジット(すべてWikimedia Commons):
1. シャトー・シャロンから望む畑と村 — “Menétru-le-vignoble depuis Château-Chalon” by PRA, CC BY-SA 3.0
2. ヴァン・ジョーヌの古酒 — “Clavelin de Vin Jaune” by Arnaud 25, CC BY-SA 4.0
3. 山を望むサヴォワ・ミアンの畑 — “Myans vignoble” by Semnoz, CC BY-SA 3.0
※掲載写真はレイアウト上の都合によりリサイズ・トリミングして掲載しています。
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