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ワインガイド Vinotier

VINOTIER WINE COURSELEÇON XX

第20講 深掘り

アルザス完全編

ドイツとフランスが交わる、白ワインの宝石箱。品種名を堂々と名乗る、華やかでアロマティックな白の国へ。主役は気品のリースリングと、ライチ香るゲヴュルツトラミネール。

リースリングゲヴュルツ品種表示/グラン・クリュ
アルザス完全編のイメージ
秋のぶどう畑の向こうに教会の尖塔が立つアルザスの村エギスハイム
エギスハイム — ヴォージュ山脈の麓に連なる、おとぎ話のような村と畑。乾いた陽光が、華やかな白ワインを育てる
— Prologue

ドイツの隣の、フランス品種で名乗る白の国

アルザスは、ライン川を挟んでドイツと接するフランス北東部。歴史の中で独仏のあいだを行き来した地ゆえ、フランスでありながらドイツ的な魅力を併せ持ちます。ヴォージュ山脈が雨雲をさえぎり、フランス有数の乾いた陽だまりに。生産の9割が白で、香り高くアロマティックなワインの宝庫です。

最大の特徴は、フランスで唯一ラベルに「品種名」を堂々と書くこと。第5講ボルドーや第4講ブルゴーニュが「土地」で語るのに対し、アルザスは「品種」で名乗ります。だから初心者にも分かりやすい。まずは主役の四品種から。

— Noble Grapes

四つの高貴品種アルザスの主役たち

アルザスには「四大高貴品種(セパージュ・ノーブル)」と呼ばれる白があります。グラン・クリュにも使える、格の高い四つです。

秋の黄金色に染まるアルザス、エギスハイム周辺のぶどう畑の遠景
アルザスのぶどう畑 — ヴォージュ山脈と平野のあいだの斜面に、多彩な土壌がモザイク状に広がる。品種ごとに最適な区画が選ばれる
リースリングRiesling

気品の王。リースリングはここでは辛口が基本。ライムやミネラル、骨格のある凛とした味わい。第11講ドイツより力強い。白・辛口

ゲヴュルツトラミネールGewürztraminer

ゲヴュルツは華やかさの代名詞。ライチ・バラ・スパイスの濃厚なアロマ。エスニックや中華に驚くほど合う。白

ピノ・グリPinot Gris

ピノ・グリはふくよかでコク深い。洋梨や燻製のニュアンス。白身肉やきのこ料理に寄り添う。白

ミュスカMuscat

ぶどうそのものの香りがするのに、味わいは辛口という意外性。食前酒にぴったりの軽やかさ。白・辛口

ゲヴュルツ×アジア料理の妙 華やかで少しスパイシーなゲヴュルツトラミネールは、麻婆豆腐やタイカレー、中華に驚くほど寄り添います。「ワインと和食・アジア料理」を考えるとき、アルザスは最強の引き出し。香りの強い料理には、香りの強いワインを——覚えておくと便利です。

— Grand Cru

品種で名乗り、畑で究めるアルザス・グラン・クリュ

品種名表示が基本のアルザスですが、頂点には「グラン・クリュ」があります。とくに優れた51の特級畑が認定され、そこでは四大高貴品種が土地の個性をまとって深みを増します。ヴォージュ山麓は土壌が驚くほど多様で、花崗岩・石灰・砂岩・火山岩などのモザイク。同じリースリングでも、畑が変われば表情が変わります。

品種表示Varietal

ラベルの主役は品種名。「リースリング」「ゲヴュルツ」と書かれ、味の想像がつきやすい。

グラン・クリュGrand Cru

51の特級畑。畑名+品種名で、土地が育てた格別の一本を示す。長期熟成も狙える。

辛口が基本Mostly Dry

多くは辛口だが、近年は甘めの造りも。心配なら裏ラベルの甘辛表示を確認すると安心。

「土地」と「品種」、二つの語り方 第4講ブルゴーニュが畑(クリマ)で、アルザスが品種で名乗る——フランスの中でも対照的。両方を知ると、ラベルの読み方の引き出しが一気に増えます。

— Sweet & Sparkling

甘口と泡もVT・SGN・クレマン

ヴァンダンジュ・タルディヴVT

「遅摘み」の意。完熟ぶどうから造る、ふくよかで甘やかな白。芳香品種の魅力が凝縮する。甘口

SGNSélection de Grains Nobles

貴腐ぶどうを選り抜いた極甘口。第19講甘口ワインで学んだ貴腐の、アルザス版の至宝。貴腐

クレマン・ダルザスCrémant d'Alsace

瓶内二次発酵の泡。フランスのクレマン生産量No.1で、コスパ抜群。第13講スパークリングの本格派。泡

一つの村で、すべてが揃う 辛口の白、華やかなアロマ、極甘口の貴腐、本格的な泡——アルザスは、一つの産地でこれだけのスタイルを高水準で楽しめる稀有な地。「白ワインの宝石箱」と呼ばれる所以です。

— Recap

華やかな白で食卓を品種で味わう喜び

アルザスは四大高貴品種・品種表示というわかりやすさ・グラン・クリュの奥行き、この三点で気持ちよく選べます。最初の一本は、凛とした辛口のアルザス・リースリングか、ライチ香るゲヴュルツトラミネール。とくにゲヴュルツは、エスニックや中華とあわせると新発見があります。香りの料理に、香りのワインを。

フランスの主要産地を一通り巡ってきました。次は、海を望むもうひとつの古豪へ。ポートだけじゃない、ヴィーニョ・ヴェルデや土着品種の宝庫——ポルトガル完全編。個性的なぶどうが息づく、大西洋の食卓ワインの国へご案内します。

À votre santé.

華やかで、明快で、料理を選ばない。アルザスは「品種の個性をまっすぐ楽しむ」という、白ワインの喜びを教えてくれます。

写真クレジット(すべてWikimedia Commons):
1. エギスハイムの村とぶどう畑 — “Vue depuis les vignes (Eguisheim) (2)” by Gzen92, CC BY-SA 4.0
2. 秋のエギスハイム遠望 — “Vue de Eguisheim en automne” by AlineRockstud68, CC BY-SA 4.0
※掲載写真はレイアウト上の都合によりリサイズ・トリミングして掲載しています。
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