シャンパンは「泡の中の特別な一種」
よくある誤解ですが、シャンパンとスパークリングワインは対等な別物ではありません。スパークリングワイン(発泡するワイン全般)という大きな枠があり、その中でシャンパーニュ地方の厳しい規定を満たした泡だけが「シャンパン」を名乗れます。つまりシャンパン ⊂ スパークリングワインという関係です。
コスパよく楽しむなら
シャンパンと同じ瓶内二次発酵で造られる泡は、他産地にもあります。スペインのカヴァ、フランス他地域のクレマンなどは、本格的な泡を手頃な価格で楽しめます。選び方はスパークリングワインの選び方、産地の詳細はシャンパーニュでどうぞ。
泡の造り方は、ひとつではない
「シャンパンとそれ以外」を分けている実質は、泡をどうやって入れるかにあります。方法は大きく四つあり、これが味わいと価格の差に直結します。
| 製法 | やり方 | 泡と味わいの傾向 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 瓶内二次発酵 | 瓶に酵母と糖を加え、瓶の中で二度目の発酵を起こす。澱とともに寝かせる | 泡が細かく持続的。パンやナッツを思わせる熟成香が出やすい | シャンパーニュ、クレマン、カヴァ、フランチャコルタ |
| タンク方式(シャルマ) | 大きな密閉タンクで二次発酵させ、加圧したまま瓶詰めする | 果実やぶどうの香りが素直に残る。価格を抑えやすい | プロセッコ、多くのモスカート |
| トランスファー方式 | 瓶内で発酵させたあと、加圧タンクに移して濾過し瓶詰めする | 瓶内発酵に近い性格。作業を効率化できる | 各国の中価格帯 |
| 炭酸ガス注入 | できあがったワインに炭酸ガスを吹き込む | 泡は粗く抜けやすい。もっとも安価 | 低価格帯の発泡ワイン |
同じ「スパークリングワイン」でも、価格が数百円から数万円まで開くのは、この工程の重さが違うからです。瓶内二次発酵は一本ずつ瓶の中で造るうえ、その後も長く寝かせる必要があり、そのぶん設備も時間も資金も拘束されます。
シャンパーニュを名乗るための、主な条件
シャンパーニュは、産地・品種・栽培・醸造・熟成のそれぞれに規定を持つ呼称です。主な柱を挙げると次のようになります。
| 項目 | 規定のあらまし |
|---|---|
| 産地 | フランス・シャンパーニュ地方の定められた区域で収穫されたぶどうのみ |
| 品種 | シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエが主体(ごく少量の伝統品種も認められる) |
| 造り | 瓶内二次発酵。手摘み収穫と、搾汁量の上限も定められている |
| 熟成 | ノンヴィンテージで最低15か月、収穫年を表示するものは最低36か月 |
この熟成期間の長さが、シャンパーニュ特有のビスケットやトーストのような香りを生みます。澱(役目を終えた酵母)と長く接することで、酵母由来の風味がワインに移るためです。
世界の主要な泡を、並べて比べる
| 名称 | 国・産地 | 主な製法 | 味わいの傾向 |
|---|---|---|---|
| シャンパーニュ | フランス・シャンパーニュ | 瓶内二次発酵 | 酸が高く、熟成由来の香ばしさ |
| クレマン | フランス各地(アルザス、ロワール、ブルゴーニュ ほか) | 瓶内二次発酵 | 産地の品種を映す。価格対品質に定評 |
| カヴァ | スペイン(主にカタルーニャ) | 瓶内二次発酵 | 土着品種由来のふくよかさとほろ苦さ |
| フランチャコルタ | イタリア・ロンバルディア | 瓶内二次発酵 | きめ細かく、熟成感のあるタイプも |
| プロセッコ | イタリア・ヴェネト ほか | タンク方式 | 洋なしや白い花の香り。軽快で親しみやすい |
| ゼクト | ドイツ | タンク方式が中心(瓶内も有) | リースリング由来の酸が生きたタイプも |
| 日本のスパークリング | 日本各地 | 瓶内・タンクの両方 | 甲州やデラウェアなど、和食に寄り添う軽やかさ |
甘辛の表示を読む
泡のラベルでいちばん実用的なのが、ドザージュ(仕上げに加える糖分)による甘辛表示です。糖分の少ない順に並びます。
| 表示 | 甘さの位置 | 向く場面 |
|---|---|---|
| Brut Nature/Zéro Dosage | 糖分をほぼ加えない、もっとも辛口 | 生牡蠣や白身魚など、繊細な料理に |
| Extra Brut | かなり辛口 | 食中に通して飲みたいとき |
| Brut | 辛口。もっとも流通量が多い | 乾杯から食事まで万能 |
| Extra Dry | Brutよりやや甘い(名前と印象が逆なので注意) | 前菜や軽い塩気のあるもの |
| Sec/Demi-Sec/Doux | 中甘口から甘口へ | デザートや、甘みのある料理に |
「Extra Dry」が Brut より甘い、というのは売り場でもっとも間違えやすい点です。辛口を求めるなら Brut 以下と覚えておくと確実です。製法や産地をもっと広く知りたい方は第13講スパークリング大全、シャンパーニュの造り手の世界はシャンパーニュのグランメゾンでどうぞ。