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World — フランス・ボルドー/メドック・ポイヤック

シャトー・ラフィット・ロートシルト

Château Lafite Rothschild / 17世紀(1868年ロスチャイルド家所有)
シャトー・ラフィット・ロートシルトの全景
シャトー・ラフィット・ロートシルトの全景 / Photo: “Château Lafite-Rothschild (Pauillac)” by Giogo, CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)
どんな造り手?

シャトー・ラフィット・ロートシルトは、ボルドー・ポイヤックの1855年メドック格付け第1級。格付け当時から「第1級の筆頭(プルミエ・デ・プルミエ)」と位置づけられ、5大シャトーのなかでもエレガンスと香りの気品の象徴とされます。1868年以来、金融界の名門ロスチャイルド(ロートシルト)家が所有し、現在は6代目サスキア・ド・ロチルドが率いる憧れの一本です。

「第1級の筆頭」という称号

シャトー・ラフィット・ロートシルトは、ボルドー・ポイヤックに畑を構える1855年メドック格付け第1級のシャトーです。名はガスコーニュの古い言葉で「小さな丘」を意味する「ラ・イット」に由来すると説明されます。土地の記録は13世紀に遡り、17世紀末からセギュール家のもとでぶどう栽培が本格化。18世紀、「ワインの王子」と呼ばれたニコラ・アレクサンドル・ド・セギュール侯爵の時代にその名は欧州の宮廷へ広まり、ルイ15世の宮廷で「王のワイン」と称されたと伝えられます。ポンパドゥール夫人が晩餐に供したという逸話も残りますが、この種の宮廷伝説は後世に膨らんだ部分が大きいと指摘されています。

確かなのは、1855年の格付けでラフィットが「プルミエ・デ・プルミエ(第1級の筆頭)」、つまり第1級4軒の中でも筆頭に置かれたことです。この称号は、いまも公式に「First of the First」として掲げられています。

1868年、ロスチャイルド家へ

1868年8月8日、パリの競売でラフィットを落札したのが、金融界の名門ロスチャイルド家のジェームズ・ド・ロスチャイルド男爵でした。落札額は440万フラン。しかし男爵は購入からわずか3か月後に世を去り、一度もシャトーに足を運べなかったと伝えられます。遺志を継いだ3人の息子から数えて、現在の当主は6代目——2018年に会長へ就いたサスキア・ド・ロチルドです。元ニューヨーク・タイムズ記者という経歴を持つ、グループ初の女性トップ。父エリック男爵が1974年から44年かけて磨いた体制を受け継ぎ、有機栽培への転換を進めて2024年ヴィンテージで初の全面有機認証を得ました。

なお、隣のシャトー・ムートン・ロートシルトも同じロスチャイルド一族ですが、こちらは別の分家(ナサニエル系)の所有。「一族で第1級を2つ持つ」という、ボルドーでも他に例のない構図です。

畑と醸造——112ヘクタールと円形セラー

畑は約112ヘクタール。シャトーを囲む丘、西側のカリュアド台地、そして隣村サンテステフ側の約4.5ヘクタールという3つの区画からなり、最後の区画は歴史的経緯から特例でポイヤックAOCを名乗れることで知られます。植栽はカベルネ・ソーヴィニヨン約70%、メルロー約25%。グラン・ヴァンのブレンドは年によって動き、カベルネが8〜9割を占めるのが通例です(2010年はカベルネ87%・メルロー13%)。

グラン・ヴァンに使うのは樹齢10年を超える樹のみ。新樽100%で約15か月熟成させますが、その樽も、ポイヤックに構えた自社の樽工房で作られます。2年目の熟成庫は、建築家リカルド・ボフィルが1987年に設計した円形の地下セラー。16本の柱が支えるアーチの下に2,200樽が円環状に並ぶ光景は、ボルドーでもっとも美しいセラーのひとつに数えられます。年産はグラン・ヴァンがおよそ1.5万〜2万ケース。味わいは杉、シガーボックス、鉛筆の芯(グラファイト)、カシス、スミレ——force(力)ではなくfinesse(精緻)で語られる、第1級の中の「香りの貴族」です。

カリュアドと、中国ブームの狂騒

セカンドのカリュアド・ド・ラフィットは、名の由来であるカリュアド台地の区画などから、メルロー比率高めで造られます。注目すべきはその市場での立ち位置で、2000年代後半からの中国ブームでは「ラフィット」の名を冠するがゆえに需要が集中し、一時は他シャトーの本体やスーパーセカンドを上回る価格で取引されました。2010年には、2008年ヴィンテージのボトルに漢字の「八」を刻印すると発表しただけで、価格が24時間で約2割上がるという事件も起きています(その後、相場は大きく下げました。ブームの熱と冷めやすさの、教科書のような実例です)。

逸話をもうひとつ。1985年、ロンドンのクリスティーズで「1787年ラフィット」——トーマス・ジェファーソン旧蔵と伝えられる、Th.J.刻印入りの古瓶——が10万5,000ポンドで落札され、ワイン1本の史上最高額を記録しました。のちに刻印の真贋を巡る大論争となり、いまも決着していません。真偽はどうあれ、「18世紀の瓶にこの値が付くのはラフィットだけ」という事実そのものが、このシャトーの神話性を物語ります。

憧れの一本として——買い方の現実

日本での実勢は、現行ヴィンテージの正規流通で15万円前後、1982年のような著名年は20万〜30万円超(2026年8月時点)。近年では2016・2018・2019・2022年の評価が高く、2019年は満点評価も得ています。熟成力は数十年単位なので、買うならヴィンテージの知識が最も物を言うワインでもあります。

予算に応じた入口も整っています。カリュアド(4万〜6万円前後)、DBRが1962年から育てるポイヤック第4級シャトー・デュアール・ミロン(1万円台)、チリのロス・ヴァスコス(数千円台)。同グループはソーテルヌ第1級のシャトー・リューセックやポムロールのレヴァンジル、中国・山東省の瓏岱(ロン・ダイ)まで擁し、「ラフィット流」は5大陸に広がっています。ボルドーの全体像は第5講 ボルドー完全編で。同じポイヤックのラトゥールムートンと並べて語られるとき、ラフィットを指す言葉はいつも決まっています——もっともエレガントな第1級、と。

よくある質問

シャトー・ラフィット・ロートシルトはどんなワイン?
ボルドー・ポイヤックの1855年メドック格付け第1級シャトーです。格付け当時から「第1級の筆頭」と位置づけられ、5大シャトーのなかでもエレガンスと香りの気品の象徴とされます。カベルネ・ソーヴィニヨン主体の繊細で長期熟成型の赤を生み、1868年からロスチャイルド家が所有しています。
「カリュアド・ド・ラフィット」とは?
シャトー・ラフィットのセカンドワインです。名はシャトーに隣接する「カリュアド台地」に由来し、メルローの比率が高いぶん、グラン・ヴァンよりしなやかで早くから楽しめます。2000年代後半の中国ブームでは、他のシャトーの本体をも上回る価格で取引されるほど人気が過熱しました。現在の日本での実勢は1本4万〜6万円前後です(2026年8月時点)。
どのくらいの価格?
グラン・ヴァンは現行ヴィンテージの正規流通で15万円前後、1982年など著名な当たり年は20万〜30万円を超えます(2026年8月時点の目安)。セカンドのカリュアドは4万〜6万円前後、同じDBRグループのシャトー・デュアール・ミロンなら1万円台前半〜半ばです。価格はヴィンテージ・流通・為替で大きく動きます。
ラトゥールやムートンとの違いは?
同じポイヤックの第1級でも、ラトゥールが「力強く荘厳でもっとも長命」、ムートンが「豊満で果実味豊か」と評されるのに対し、ラフィットは「精緻で香り高く、もっともエレガント」というのが定番の対比です。杉やシガーボックス、鉛筆の芯(グラファイト)を思わせる香りと、絹のようなタンニンがラフィットらしさの代名詞です。
いまの当主は誰ですか?
2018年から、一族6代目のサスキア・ド・ロチルドがドメーヌ・バロン・ド・ロチルド(DBR Lafite)の会長を務めています。元ニューヨーク・タイムズ記者で、同グループ初の女性トップ。父エリック男爵(1974年から指揮)から引き継ぎ、有機栽培への転換などを進めています。
有機栽培なのですか?
2016年頃から転換を始め、2024年ヴィンテージがラフィットとして初の全面有機認証ヴィンテージになりました。運営元のDBRは2023年にB Corp認証も取得しています。伝統の頂点にあるシャトーが有機へ舵を切ったことは、ボルドー全体の流れを象徴する出来事とされます。
「1787年のラフィット」の話は本当ですか?
1985年にロンドンのクリスティーズで、トーマス・ジェファーソンの所有と伝えられる「1787年ラフィット」(Th.J.の刻印入り)が10万5,000ポンドで落札され、ワイン1本の史上最高額を記録したのは事実です。ただしその後、刻印が現代の工具によるものだとする鑑定が示されるなど真贋論争となり、決着はついていません。この顛末は『億万長者のワイン(The Billionaire's Vinegar)』という本の題材にもなりました。
手頃にラフィットの世界を試す方法は?
DBRグループの入口として、ポイヤック第4級のシャトー・デュアール・ミロン(1万円台)や、チリのロス・ヴァスコス(数千円台)、ボルドーACのブランドワイン「レジェンド」があります。頂点の様式そのものではありませんが、同じチームが手がける「ラフィット流」の輪郭に触れられます。

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最終更新: 2026-08-27 / 監修: Vinotier編集部