「ブレンド」と「左岸・右岸」の産地
ボルドーは、単一品種で勝負するブルゴーニュとは対照的に、複数品種を混ぜて完成させるのが流儀。骨格を与えるカベルネ・ソーヴィニヨン、果実味とまろやかさのメルロー、香りを添えるカベルネ・フランなどを組み合わせ、造り手ごとの個性を表現します。
左岸と右岸
ジロンド川を境に、味わいの傾向が分かれます。
- 左岸(メドックなど) — カベルネ・ソーヴィニヨン主体。骨格があり長熟。
- 右岸(サンテミリオン、ポムロール) — メルロー主体。まろやかで華やか。
格付けシャトーの存在も、ボルドーを語るうえで欠かせません。
熟成と料理
ボルドーは熟成によって真価を発揮する産地。若いうちは硬くても、時間がタンニンを丸くし複雑な香りを育てます。赤身肉やラムなど、しっかりした料理と合わせるのが王道です。詳しくは第5講 ボルドー完全編でどうぞ。
エリア・村による違い
左岸・右岸という大きな区分の中にも、名高いエリアが連なります。左岸のメドック地区では村ごとに性格が変わり、力強いポイヤック、香り高くしなやかなマルゴー、均整のとれたサン・ジュリアン、堅牢なサン・テステフが四大村として知られます。市街の南に広がるグラーヴ地区(中心はペサック・レオニャン)は、赤も辛口白も造る歴史あるエリアで、土や煙を思わせるニュアンスが個性。右岸のサン・テミリオンは石灰岩の丘が生むエレガンス、隣のポムロールは粘土土壌が育てる豊満なメルローの聖地です。そして左岸の南端ソーテルヌでは、貴腐菌の力を借りた世界屈指の甘口白が生まれます。
ヴィンテージと熟成の傾向
大西洋の影響を受ける海洋性気候のため、ボルドーは年による作柄の差が比較的出やすい産地とされます。特に収穫期の雨に左右されやすく、「偉大な年」「難しい年」という言い方が今も生きています。飲み頃はクラスによって大きく異なり、日常価格のACボルドーは2〜5年、クリュ・ブルジョワ級は5〜10年、格付けシャトーの良年は10〜30年かけてゆっくり開くと言われます。若い高級ボルドーを飲むなら、デキャンタージュで空気に触れさせるのも一手です。
価格帯別の選び方
- 〜2千円 — ACボルドーやボルドー・シュペリュール。ブレンドの妙による味の安定感が魅力で、日常の肉料理の相棒に向きます。
- 2〜5千円 — クリュ・ブルジョワや、フロンサック、カスティヨンなど周辺エリアの実力派。「格付けの外の掘り出し物」を探す楽しみがある価格帯です。
- 5千円〜 — 格付けシャトー、および有名シャトーのセカンドワイン。セカンドは看板ワインの弟分で、名門の造りを比較的手頃に、早い飲み頃で体験できます。
合う料理と同郷合わせ
ボルドーの郷土料理の代表は、葡萄の蔓の火で焼くと伝えられるアントルコート・ボルドレーズ(赤ワインソースの牛リブロースステーキ)。ポイヤックの仔羊や鴨のコンフィも定番で、カベルネのタンニンが肉の脂とたんぱく質をしっかり受け止めます。意外な古典としては、ソーテルヌの貴腐ワインとロックフォール(青カビチーズ)やフォアグラの組み合わせ。甘味と塩気・コクのコントラストが長く愛されてきました。日本の食卓なら、すき焼きやローストビーフなど、コクのある牛肉料理が近道です。
産地の物語
ボルドーの繁栄は12世紀、アキテーヌ女公アリエノールとイングランド王ヘンリー2世の結婚により、この地が英国王室の支配下に入ったことに始まります。以来ボルドーの赤は「クラレット」の名で英国に愛され、大西洋貿易の港町として栄えました。1855年にはパリ万国博覧会を機に、ナポレオン3世の求めに応じてメドックの格付けが定められ、これが現在まで続く格付けシャトーの序列の原点になったと伝えられます。格付けの全貌と各シャトーの物語は銘醸図鑑「メドック格付け1855」で辿れます。
似ている産地との比較
フランス二大銘醸地として必ず比較されるのがブルゴーニュです。ボルドーは「ブレンド・シャトー・格付けは造り手単位」、ブルゴーニュは「単一品種・ドメーヌ・格付けは畑単位」と、思想がきれいに対をなします。味わいも、がっしりと骨格のあるボルドーに対し、ブルゴーニュは繊細で酸が主役。グラスの形まで、ボルドー型(縦長)とブルゴーニュ型(丸型)に分かれるほどの対照です。もう一つの比較対象は、同じカベルネ・ソーヴィニヨンを主役とするカリフォルニアのナパ・ヴァレー。温暖なナパは果実味が豊かで若いうちから楽しめるスタイル、ボルドーは酸と渋みの引き締まった骨格で熟成を待つスタイルと言われ、飲み比べると産地の気候の違いがよく分かります。