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東京ワイン

tokyo / 日本・東京
ひとことで言うと

東京のワインは、都市型(アーバン)ワイナリーという新しい潮流で語られます。広大な畑を持たず、他産地のぶどうを取り寄せたり、わずかな都市農地のぶどうを使ったりする少量生産が特徴。街なかで醸造・販売・飲食を一体化した拠点が、産地の核です。

街なかのワイナリー

東京のワインは、ほかの産地とはひと味違います。語られるのは都市型(アーバン)ワイナリーという潮流。広大なぶどう畑を持たず、北海道余市や長野などからぶどうを取り寄せたり、わずかな都市農地の実を使ったりして、街なかで少量を醸します。畑ではなく「街」が舞台のワインづくりです。

醸造・販売・飲食を一つに

象徴的なのが、2014年に練馬区大泉学園で開業した東京初の都市型ワイナリー。約70㎡ほどの小さな空間で、醸造から販売、飲食までを一体で行います。無ろ過・無清澄でぶどうに寄り添った「濁りワイン」など、つくり手の個性が色濃く出るのも魅力。ナイアガラやメルローなど、産地から届いたぶどうが街で一杯に姿を変えます。

都産都消の物語

「東京の農業を元気にしたい」「都産都消」——東京ワインの核にあるのは、地域密着の物語です。街場の惣菜や軽食と気軽に合わせて楽しめます。まずは「日本ワイン」とはから背景を知り、ぶどうの故郷山梨とあわせて、ワインの「畑と街」のつながりを感じてみてください。

気候と土地の個性

「東京に畑なんてあるの?」と思われがちですが、練馬や世田谷、多摩地域には今も都市農地が残り、果樹園や直売所が点在しています。とはいえ、ワイン用に広いぶどう畑を確保するのは現実的に難しい土地。そこで東京の造り手たちは発想を変えました。畑の個性を競うのではなく、「醸す場所」としての街の強み——人が集まり、食文化が集積し、造り手と飲み手の距離が近いこと——を生かすのです。収穫したぶどうは鮮度が命なので、提携する産地から届いたぶどうをすぐに仕込める体制づくりも、都市型ワイナリーの腕の見せどころ。東京の「テロワール」は土壌ではなく、街そのものだといえるかもしれません。

主な品種と味わいの傾向

東京の醸造所で仕込まれるのは、ナイアガラデラウェアといった親しみやすい生食系品種から、メルローやミュラー・トゥルガウまでさまざま。提携産地の顔ぶれによって、その年ごとにラインナップが変わるのも都市型ならではです。味わいの傾向は、無ろ過・無清澄の「濁りワイン」に代表されるフレッシュで素朴な方向。タンクごとの少量仕込みのため、同じ品種でもロットごとに表情が違い、「一期一会の一本」に出会えるのが楽しさです。ぶどうの個性をそのまま瓶に閉じ込めたような、飾らない味わいを気軽に楽しむのが東京流といえます。

楽しみ方にもコツがあります。フレッシュさが命のスタイルが多いので、長く寝かせるより若いうちに、よく冷やして飲むのが基本。にごりのあるタイプは瓶の底に澱が沈むことがありますが、これはぶどう由来の自然なもので、軽く混ぜて旨みごと楽しむ流儀もあります。ヴィンテージや畑の格付けを気にせず、「今年はどの産地のぶどうが届いたのか」を話の種に開けられる気安さこそ、東京ワインの持ち味です。

郷土の食との合わせ方

東京にも、江戸から続く郷土の味があります。あさりをたっぷり使った深川めしには、フレッシュな白を。貝の旨みと出汁の風味に、ナイアガラやデラウェアの素直な果実味と酸がすっと寄り添います。月島名物のもんじゃ焼きには、にごり系のデラウェアが好相性。ソースの甘辛さと香ばしさを、旨みを含んだにごりの厚みが受け止めます。江戸前の天ぷらなら、すっきりした辛口の白が油をほどよく切り、素材の香りを引き立てます。いずれも肩肘張らない街の味。できたてのワインを、できたての料理と合わせられるのは、醸造所と食卓が近い東京ならではの贅沢です。

ワイナリー巡りのコツ

東京のワイナリー巡りは、電車で行けるのが最大の利点。試飲を心置きなく楽しめます。ただし小さな醸造所は、仕込みと店番を少人数でこなしていることが多いため、営業日や見学の可否は必ず事前に確認を。秋の仕込みの季節は、運がよければ醸造の様子を間近に見られる一方、忙しさで店休のこともあります。併設の飲食スペースがある店なら、グラス1杯から気軽に試せるので、まずは「一杯飲みに行く」感覚で訪ねてみるのがおすすめです。

産地の歩みとこれから

日本のワインづくりは明治期に山梨などで本格化しましたが、東京は長いあいだ「飲む街」であり続けました。それが変わり始めたのが2010年代。東京ワイナリーの開業を先駆けに、街なかで醸す小さなワイナリーという潮流が生まれ、各地の都市へ広がっていったと伝えられます。ワインが「遠い産地から届くもの」から「自分の街で生まれるもの」へ——この転換は、日本のワイン文化の裾野を広げる動きとして注目されています。飲み手との距離の近さを生かして、造り手の顔が見えるワインづくりはこれからも続いていくでしょう。より広い日本ワインの流れは第9講 日本ワイン産地巡りでどうぞ。

東京のワイナリー

よくある質問

東京でワインが造られているの?
造られています。広大な畑を持たない「都市型(アーバン)ワイナリー」という潮流で、北海道余市や長野などのぶどうを取り寄せて醸造したり、わずかな都市農地のぶどうを使ったりします。2014年に練馬区で開業した東京ワイナリーが23区初・都内初の象徴的存在です。
東京ワインの特徴は?
街なかで醸造・販売・飲食を一体化した小規模・少量生産が特徴です。無ろ過・無清澄でぶどうに寄り添った「濁りワイン」など、つくり手の個性が強く出ます。「都産都消」「東京の農業を元気にする」という地域密着の物語が核にあります。
東京ワインに合う料理は?
フレッシュで素朴な味わいは、街場の惣菜や軽食、多国籍料理など、肩肘張らない食事とよく合います。醸造所併設の飲食スペースで、できたてを味わうのも醍醐味です。
東京のワイナリーは見学できる?
多くの都市型ワイナリーは販売や飲食のスペースを併設しており、電車で気軽に立ち寄れるのが魅力です。ただし小規模で醸造作業と並行して営業しているため、営業日や見学の可否は事前に確認してから訪ねるのがおすすめです。
東京産のぶどうも使われているの?
使われることもあります。練馬など都市農地で育ったぶどうを仕込む例もありますが、量はわずかで、多くは北海道や長野など提携する産地から届くぶどうを醸しています。「育てる産地」と「醸す街」の分業が東京スタイルです。

最終更新: 2026-08-07 / 監修: Vinotier編集部