「日本ワイン」は、定義のある言葉
かつて「国産ワイン」という言葉は曖昧でした。海外から輸入したぶどう果汁やバルクワインを国内で詰めたものまで「国産」と呼べてしまい、消費者には中身が分かりにくかったのです。そこで2018年、国税庁の表示ルールによって「日本ワイン」=国産ぶどう100%で国内醸造と明確に定義されました。
「国内製造ワイン」との違い
ポイントは、原料のぶどうがどこ産かです。
- 日本ワイン — 国産ぶどう100%。産地・品種・収穫年をラベルに表示できる。
- 国内製造ワイン — 国内で造られても、輸入果汁や濃縮果汁・バルクを使ったもの。「日本ワイン」とは名乗れない。
同じ「日本で造られたワイン」でも、この二つは区別されます。
ラベルでの見分け方
「日本ワイン」の表示があれば、国産ぶどう100%の証。さらに「GI(地理的表示)山梨」「GI長野」などの産地呼称があれば、その土地のぶどうで定められた基準を満たした証になります。気になったら、裏ラベルの原材料欄もチェックしてみてください。
表示ルールを、もう一歩詳しく
「日本ワイン」であることと、「産地名・品種名・収穫年を名乗れること」は、別の階層のルールです。整理すると次のようになります。
| 表示 | 条件の考え方 |
|---|---|
| 日本ワイン | 国産ぶどう100%を原料に、日本国内で醸造したもの |
| 産地名(例:山梨) | その地のぶどうを85%以上使い、その地域で醸造したもの |
| 品種名(例:甲州) | その品種を85%以上使ったもの(複数併記の場合は別の規定) |
| 収穫年 | その年に収穫したぶどうを85%以上使ったもの |
| GI(地理的表示) | 指定産地の基準を満たし、管理機関の確認を受けたもの |
この「85%」という数字が、表示ルール全体を貫く基準になっています。ラベルの読み解き方は第41講 ラベルの読み方完全編でも扱っています。
日本ワインを支える品種
日本ワインの個性は、まず品種に現れます。
- 甲州 — 日本固有の白ぶどう。穏やかな香りと繊細な酸、かすかな苦味。和食との相性のよさで世界的にも紹介されるようになりました。
- マスカット・ベーリーA — 川上善兵衛が育成した交配品種。いちごやキャンディを思わせる香りと軽やかなタンニンが特徴です。
- 欧州系品種 — メルロー、シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンなど。長野の桔梗ヶ原メルローや北海道のピノ・ノワールのように、産地と品種の相性が確立されつつある例も増えています。
- 北米系品種 — デラウェア、ナイアガラなど。親しみやすい香りで、地域に根づいた造りが続いています。
産地の広がり
かつて日本ワインといえば山梨と長野が中心でしたが、いまや状況は大きく変わりました。北海道の冷涼さを生かした造り、山形や新潟の個性、そして近年は九州各県や四国、関西にも意欲的な造り手が現れています。
各産地の特徴は第9講 日本ワイン産地巡りにまとめ、都道府県別のワイナリーはワイナリーガイドから探せます。訪問できる蔵も多く、造り手と直接話せるのは、輸入ワインにはない日本ワインならではの楽しみです。
選び方のコツ
日本ワインは、生産量が小さく価格が抑えにくいという構造的な事情があります。同じ価格帯の輸入ワインと単純に比べると割高に見えることもありますが、その一本が「どこの誰が、どんな畑から造ったか」まで辿れるというのは、大きな価値です。
最初の一本を選ぶなら——和食に合わせるなら甲州、軽やかな赤ならマスカット・ベーリーA、しっかりした赤なら長野や北海道の欧州系品種。この三方向から入ると、日本ワインの現在地がよく見えてきます。