ワインガイド Vinotier
Wine Region

神奈川ワイン

kanagawa / 日本・神奈川
ひとことで言うと

神奈川は、畑を持たない都市型ワイナリーを軸に近年ワイン造りが芽吹きつつある産地。横浜の港町でクラフトワインが醸され、川崎・相模原などで育つ県内産ぶどうを生かす地産地消の動きが広がります。自然酵母や有機的な栽培など、環境にやさしい造りを志向する担い手が目立ちます。

港町に芽吹く都市型ワイナリー

神奈川のワインを語るとき、鍵になるのが都市型ワイナリーという新しいかたち。自社畑を持たず、市街地に醸造所を構えてぶどうを仕込むスタイルです。その象徴が、横浜の港に近い場所で営まれる小さなクラフトワイナリー。造る現場が街なかにあり、ワインが生まれる様子を身近に感じられる——それが神奈川ならではの魅力です。まずは「日本ワイン」とはから、その背景をたどってみてください。

県内産ぶどうと地産地消

神奈川は湿度が高く、ワイン用ぶどうの栽培には本来やさしい土地ではないとされます。それでも近年、川崎や相模原などの農家がシャルドネ・メルロー・ピノ・ノワールといった品種に挑み、県内産ぶどうが少しずつ出荷されるようになりました。相模原ではワイン特区も生まれ、地元のぶどうを地元で醸す地産地消の流れが育ちつつあります。まだ小さな一歩ですが、その歩みは着実です。

気候と土地の個性

神奈川は温暖多湿な太平洋側気候で、梅雨と秋の長雨、高い湿度と、ワイン用ぶどうには本来厳しい条件が重なります。加えて都市化が進み、まとまった農地そのものが貴重です。それでも県内は一様ではありません。相模原・津久井など内陸の丘陵地は都心部より朝晩が冷え、傾斜地は水はけにも恵まれます。海沿いの都市には畑はなくとも、港町として培った食文化と消費地としての厚みがある。畑の条件で勝負するのではなく、都市の力を生かす——神奈川のワインは、その発想の転換から生まれています。一方で小田原や三浦など温暖な農業地帯を抱え、柑橘や野菜の栽培が盛んな県でもあります。農の力は決して弱くありません。

主な品種と味わいの傾向

県内産ぶどうとして挑戦が続くのは、シャルドネメルローピノ・ノワールといった欧州系品種です。温暖多湿の土地でこれらを育てるのは容易ではなく、収穫は一房ずつ丁寧に向き合う小さな規模から始まっています。味わいの傾向はフレッシュできれいな酸、ナチュラルな果実味。自然酵母での発酵など人の手を加えすぎない醸造とあいまって、濃さよりも素直さ・軽やかさを身上とする一杯が主流です。よく冷やして気軽に、が神奈川流です。また都市型ワイナリーは各地の産地からぶどうを仕入れるため、一つの蔵で多彩な品種を飲み比べられるのも魅力です。

郷土の食との合わせ方

神奈川の食といえば、まず横浜中華街。点心や海鮮の炒め物には、フレッシュな酸を持つ白がよく合います。油と塩気をワインの酸がすっきり流してくれるからです。詳しくは中華料理とワインをどうぞ。湘南しらすの釜揚げや生しらすには、軽やかでミネラル感のある白を。そして文明開化の横浜で広まったと伝えられる牛鍋や、洋食文化のナポリタン・ハヤシライスには、渋み穏やかな軽めの赤が寄り添います。三崎港のまぐろには、赤身なら軽めの赤かロゼ、脂ののったトロなら酸のしっかりした白を。鎌倉野菜のサラダや湘南の野菜料理には、ナチュラルな白がそのまま寄り添います。港町の開かれた食文化そのものが、神奈川ワインの合わせ先です。

ワイナリー巡りのコツ

神奈川のワイナリー巡りの最大の特徴は、電車で行けること。市街地の醸造所は駅から歩ける立地が多く、飲んだ後の運転の心配がいりません。ただし小さな造り手ばかりなので、見学や試飲は予約制が基本と心得て、各ワイナリーの案内を確認してから訪ねましょう。醸造の様子を間近に感じられる秋の仕込みシーズンは、都市型ならではの臨場感があります。街の真ん中でワインが生まれる現場には、畑の産地観光とはひと味違う「工房見学」の面白さがあります。横浜観光や中華街の食事と組み合わせれば、半日で「飲む・見る・食べる」が完結するのも都市型産地の魅力です。ボトルを買って中華街のテイクアウトと合わせれば、即席の神奈川ペアリングが完成します。横濱ワイナリーのページも参考にしてください。

産地の歩みとこれから

神奈川にはワイン産地としての長い歴史はありません。動きが生まれたのは近年のことで、横浜に都市型ワイナリーが誕生し、相模原にワイン特区が生まれ、県内の農家が醸造用品種の栽培に乗り出す——という流れが少しずつ重なってきました。「消費地が産地になる」という点で、神奈川は東京と並ぶ新しいモデルケースです。県内産ぶどうの作付けが広がれば、「神奈川の畑で育ち、神奈川で醸す」一本が当たり前になる日も遠くないかもしれません。都市と農のあいだで育つこの産地の歩みは、日本ワインの現在地そのものです。ワインは畑の酒であると同時に、飲む人の街の酒でもある——神奈川は、そのことを教えてくれる産地です。

自然に寄り添う造り

神奈川の造り手には、自然酵母での発酵や酸化防止剤をごく控えめにするなど、環境にやさしいサステナブルな醸造を志向する担い手が目立ちます。濃さを競うより、フレッシュできれいな酸とナチュラルな果実味を生かす——その一杯は、東京の都市型ワイナリーとも響き合う潮流です。第9講 日本ワイン産地巡りや、王道の山梨とあわせて、港町から広がる新しいワインの物語を味わってみてください。

神奈川のワイナリー

よくある質問

神奈川はワインの産地なの?
ワイン用ぶどうの栽培はこれまで盛んではなく、近年ようやく担い手が現れはじめた発展途上の産地です。横浜の都市型ワイナリーが県内産ぶどうを使ったワイン造りを進め、相模原にはワイン特区も生まれるなど、少しずつ動きが広がっています。
都市型ワイナリーとは?
自社畑を持たず、市街地に醸造所を構えて仕込むワイナリーのことです。横浜では港に近い場所でクラフトワインが醸され、造る現場を身近に感じられるのが魅力。県内や各地のぶどうを仕入れ、地産地消をめざす取り組みも進んでいます。
神奈川ワインに合う料理は?
フレッシュできれいな酸を持つ味わいは、中華街の点心や湘南しらす、横浜らしい洋食などとよく合います。港町の食文化に寄り添う一杯です。
神奈川産のぶどうだけでワインは造られているの?
県内産ぶどうの栽培はまだ規模が小さいため、県内外のぶどうを仕入れて醸すことも一般的です。そのうえで、川崎や相模原などで育つ県内産ぶどうを使った「地産地消」のワインづくりが少しずつ広がっています。
都市型ワイナリーは畑のあるワイナリーと何が違うの?
大きな違いは、栽培と醸造が分かれていることです。畑を持たないぶん街なかに醸造所を構えられ、造る現場を身近に見られます。一方でぶどうは産地や農家との信頼関係で調達するため、「誰が育てたぶどうか」を語れることが品質の核になります。
神奈川のワイナリーは見学できる?
都市型ワイナリーは市街地にあり電車でアクセスしやすいのが魅力ですが、小規模ゆえ見学や試飲は予約制のところが一般的です。訪問前に各ワイナリーの案内を確認してください。

最終更新: 2026-08-07 / 監修: Vinotier編集部