飲み込んだ「あと」を味わう
**余韻(フィニッシュ)**は、ワインを飲み込んだあとに、口や鼻に残る香りや味わいの長さのことです。テイスティングでは、この「あと味の長さと心地よさ」を質の手がかりにします。
長い余韻=豊かさの目安
一般に、質の高いワインは余韻が長く、飲んだあとも香りや味わいが心地よく続きます。飲み込んでから何秒残るかを意識すると、ワインの印象がぐっと立体的になります。ただし「長ければ良い」と決めつけず、心地よさやバランスも合わせて感じるのがコツです。第10講のテイスティング実践で、感じ方を磨けます。
余韻を測ってみる——具体的な手順
言葉で理解するより、一度実際にやってみるのが早道です。
- ワインをひと口含み、口の中全体に広げる。
- 飲み込む(またはスピトゥーンに吐き出す)。
- 飲み込んだ瞬間から、心の中で秒数を数えはじめる。
- 味と香りの印象が「消えた」と感じたところで止める。
このとき大切なのは、新しく口に何も入れないこと。水を飲んだり食べ物をつまんだりすると、そこで余韻は途切れてしまいます。数秒で消えるものから、20秒以上続くものまで、ワインによって差は歴然です。
数値化するときに使われるのがコーダリーという単位で、1コーダリー=1秒とされます。厳密な科学的計測ではありませんが、「なんとなく長い」を人と共有できる言葉になります。
長さより大事な「余韻の質」
熟練したテイスターが見ているのは、長さだけではありません。何が、どう残るかです。
- どんな要素が残るか — 果実の香りか、樽のバニラか、ミネラル感か、渋みか。良質なワインでは、複数の要素が層をなして順に立ち上がります。
- 変化するか — 余韻の途中で香りの表情が変わるワインは、複雑さがあると評価されます。
- 心地よいか — 苦味やアルコールの熱、酸のとがりだけが残るなら、それは長所ではありません。
つまり評価軸は「長さ×質」。単純に秒数が長いワインが優れているわけではない、というのが実務的な理解です。
余韻を左右するもの
余韻の長さは、造りの結果として現れます。一般に、収量を抑えた畑、樹齢の高い樹、凝縮したヴィンテージのワインは余韻が長い傾向にあると語られます。エキス分(水に溶けた不揮発成分)の多さが、口中に残る印象を支えているという説明がよく用いられます。
逆に、大量生産型のワインや、過度に濾過されたワインでは余韻が短くなりがちです。ただしこれは欠点ではなく、軽快さという設計思想の裏返しでもあります。
家で練習する
余韻の感覚は、比較でしか身につきません。おすすめは、同じ品種で価格帯の違う2本を並べること。たとえば1,000円台のカベルネと5,000円台のカベルネ。香りや味の濃さより、飲み込んだあとの残り方にどれだけ差があるかに驚くはずです。
この一点が分かるようになると、価格差の理由が体感として理解できるようになります。テイスティングの手順はハウツー: テイスティング、表現の語彙は第31講 テイスティングの言葉完全編をどうぞ。