ワインガイド Vinotier
World — アメリカ・ナパ・ヴァレー/オークヴィル

ロバート・モンダヴィ・ワイナリー

Robert Mondavi Winery / 1966年
ロバート・モンダヴィのワイン
ロバート・モンダヴィのワイン / Photo: “Robert Mondavi Winery (41671106011)” by U.S. Embassy and Consulates in Canada, Public domain(Wikimedia Commons)
どんな造り手?

ロバート・モンダヴィ・ワイナリーは、1966年創業のナパ・ワイン近代化の象徴。創業者ロバート・モンダヴィ(1913〜2008)は、禁酒法以後ナパで初めての大型新設ワイナリーを52歳で興し、品種名表示の普及、低温発酵やフレンチオーク小樽の体系的導入、ボルドー一級との比較試飲、音楽祭や料理教室を通じて「ワインと食と芸術」を結びつけ、「ナパ近代化の父」と呼ばれます。歴史的名畑トゥ・カロンのカベルネと、辛口白「フュメ・ブラン」で知られます。

1966年、52歳の出発

ロバート・モンダヴィは1913年6月18日、ミネソタ州ヴァージニアに生まれました。両親はイタリア・マルケ州サッソフェラート出身の移民で、一家は1920年代はじめにカリフォルニアのロダイへ移り、ぶどうの出荷業を営みます。転機は1943年。ロバートの説得で父チェーザレが、ナパ最古のワイナリーチャールズ・クルッグを買収しました。

しかし1965年、ロバートと弟ピーターの対立が決定的になります。きっかけは、ロバートが妻のためにミンクのコートを買ったことをめぐる口論だったと伝えられますが、背後には経営方針の長年のずれがありました。ロバートは家業を離れ、翌1966年、52歳で自身のワイナリーをオークヴィルに創業します。禁酒法以後のナパで初めての大型新設ワイナリーでした。建築家クリフ・メイが設計したアーチと塔を持つミッション様式の建物は、いまもナパの風景の象徴です。

家族との訴訟は1976年にロバート側の主張が認められ、1978年の和解でトゥ・カロンを含むオークヴィルの畑を取得しました。

名畑トゥ・カロン

所有畑の中心は、H・W・クラブが1868年に開墾し、1886年にギリシャ語で「最高の美」を意味する名を与えたトゥ・カロンです。ロバート・モンダヴィ・ワイナリーは現在、このうち約450エーカー(約180ヘクタール)を所有するとされます(歴史的な畑の範囲をめぐっては諸説があり、名称の商標をめぐる係争も2021年まで続きました)。

ここから生まれるカベルネ・ソーヴィニヨンは、力強くも気品ある味わい。1945年に植えられたソーヴィニヨン・ブランのIブロックは北米最古級の区画で、ごく少量の白が造られます。畑は2023年に有機認証(CCOF)を取得しました。

フュメ・ブランと、技術の近代化

1960年代、カリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランは甘口で安価な印象が強く、売れない品種でした。ロバートはこれを樽熟成の辛口に仕立て、ロワールのプイィ・フュメにちなんで語順を入れ替えた「フュメ・ブラン」と名付け、1968年に発売します。名前を商標として独占せず他社にも開放したことが、この呼び名が業界に広まった理由として語られます。

醸造面でも、低温発酵、ステンレスタンク、フレンチオーク小樽による熟成を創業期から体系的に取り入れ、ナパに広めました(工程の意味は第47講 醸造完全編で)。品種名をラベルに掲げる品種名表示も、発明者ではないものの、標準として普及させた立役者の一人です。1960〜70年代には、ソムリエや記者を相手にボルドー一級とのブラインド比較試飲を繰り返し、ナパの品質を世に問い続けました。

ワインと食と芸術

ロバートのもう一つの功績は、ワインを文化として語ったことです。1967年に広報として入社し、のちに妻となるマーグリット・ビーヴァー・モンダヴィが主導した夏の音楽祭(1969年〜)には、エラ・フィッツジェラルドらが出演。1976年には米国のワイナリーで初めての料理教室「グレート・シェフ」を始め、ジュリア・チャイルドやポール・ボキューズを招きました。「ワインと食と友人との時間」という公式の言葉は、この姿勢をよく表しています。

2001年にはUCデイヴィスに3,500万ドルを寄付し、ワイン・食科学研究所と舞台芸術センターが設立されました。

提携と拡大、そして売却

1978年、シャトー・ムートン・ロートシルトのバロン・フィリップ・ド・ロチルドと合弁に合意し、1979年にトゥ・カロンの果実で初ヴィンテージを仕込んで1980年に公表したのがオーパス・ワンです。1995年にはチリのエラスリスとセーニャ、イタリアのフレスコバルディとルーチェを立ち上げ、1979年にはロダイで日常的な価格帯のウッドブリッジを始めました。

1993年に株式を公開。2004年、米コンステレーション・ブランズが株式総額約10億ドル(負債込みの企業価値で約13.6億ドル)で買収し、家族経営の時代は終わります。ロバートは2008年5月16日、94歳で世を去りました。

2026年、本拠地の再開

コンステレーション傘下のワイナリーは、2023年からオークヴィルの本拠地を閉じて大規模な改修に入り、創業60周年にあたる2026年4月に再開しました。アーチと塔は保存され、塔は「タワー・ライブラリー」に、小ロット醸造用のトゥ・カロン・セラーが新設されています。醸造責任者は2023年からカーティス・オガサワラ。1997年から2018年まで醸造を率いたジュヌヴィエーヴ・ジャンサンは名誉醸造家として名を残しています。

どこから飲むか

ラインナップは幅広く、ナパ入門にうってつけです。日本での実勢価格(2026年8月時点の目安)は、プライベート・セレクションが2,000円台、ナパ・ヴァレー・カベルネが6,000円〜1万円台、オークヴィルやスタッグス・リープの畑限定「エステート」が1.5〜2万円台、頂点のザ・リザーブ トゥ・カロンが3〜5万円。正規輸入元の定価と市場実勢には開きがあるので、複数の店で比べてください。

最初の一本はナパ・ヴァレー・カベルネか、名前の物語ごと味わえるフュメ・ブランを。産地ガイド ナパ・ヴァレー第12講 カリフォルニア完全編で背景を押さえ、オーパス・ワンとあわせて知れば、ナパの物語がつながります。

よくある質問

ロバート・モンダヴィ・ワイナリーとは?
1966年にロバート・モンダヴィ(1913〜2008)がナパ・ヴァレーのオークヴィルに創業したワイナリーです。禁酒法以後のナパで初めての大型新設ワイナリーとされ、創業者は品種名表示の普及、醸造技術の近代化、ボルドーとの比較試飲や文化事業を通じてナパの国際的評価を押し上げ、「ナパ近代化の父」と称されます。2004年からは米コンステレーション・ブランズの傘下にあります。
なぜ52歳で独立したのですか?
モンダヴィ家は1943年、父チェーザレがナパ最古のワイナリー「チャールズ・クルッグ」を買収し、ロバートと弟ピーターが共に働いていました。1965年に兄弟の対立が決定的となり、ロバートは家業を離れることになります。きっかけは、ロバートが妻のために買ったミンクのコートをめぐる口論だったと伝えられます。翌1966年、52歳で自身のワイナリーを創業しました。その後の訴訟は1976年にロバート側の主張が認められ、1978年の和解でトゥ・カロンを含むオークヴィルの畑を得ています。
「フュメ・ブラン」とは?
樽熟成の辛口に仕立てたソーヴィニヨン・ブランに、ロバート・モンダヴィが付けた名前です。1960年代当時、カリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランは甘口で安価な印象が強く売れませんでした。そこでロワールのプイィ・フュメにちなんで語順を入れ替えた「フュメ・ブラン」と名付け、1968年に発売すると評判を呼びました。この名称を商標として独占せず、他のワイナリーにも開放したことが、名前が業界に広まった理由として語られます。
「トゥ・カロン」とは?
オークヴィルにある歴史的名畑です。H・W・クラブが1868年に開墾し、1886年にギリシャ語で「最高の美」を意味する「トゥ・カロン」と名付けました。現在はロバート・モンダヴィ・ワイナリーが約450エーカー(約180ヘクタール)を所有するとされ(区画の範囲には諸説あります)、ベックストファーやUCデイヴィスなども一部を持ちます。2023年には有機認証(CCOF)を取得しました。1945年植樹のソーヴィニヨン・ブラン「Iブロック」は北米最古級の区画として知られます。
オーパス・ワンとの関係は?
1978年、ロバート・モンダヴィとシャトー・ムートン・ロートシルトのバロン・フィリップ・ド・ロチルドが合弁に合意し、1979年にトゥ・カロンの果実で初ヴィンテージを仕込み、1980年に公表しました。これが「オーパス・ワン」です。1984年に1979年と1980年を同時発売し、1991年にオークヴィルの専用ワイナリーが完成しました。現在はコンステレーション・ブランズとロチルド家が50%ずつ保有しています。
創業者ロバート・モンダヴィの功績は?
技術面では低温発酵、ステンレスタンク、フレンチオーク小樽熟成を創業期から体系的に取り入れ、ナパに広めました。ラベル面では品種名表示を標準として普及させました(発明者ではありません)。さらにボルドー一級とのブラインド比較試飲、1969年からの夏の音楽祭、1976年からの料理教室「グレート・シェフ」など、ワインを食と芸術に結びつける活動を続けました。2001年にはUCデイヴィスへ3,500万ドルを寄付しています。2008年5月、94歳で世を去りました。
いまのワイナリーはどうなっていますか?
1993年に株式を公開し、2004年にコンステレーション・ブランズが買収しました(株式総額約10億ドル、負債込みの企業価値で約13.6億ドル)。2023年からオークヴィルの本拠地を閉じて大規模改修を行い、創業60周年の2026年4月に再開しています。クリフ・メイが設計したアーチと塔は保存され、小ロット醸造用の「トゥ・カロン・セラー」が新設されました。醸造責任者は2023年からカーティス・オガサワラが務めています。
価格はどのくらい? どこから飲み始めるべき?
日本での実勢価格(2026年8月時点の目安)は、普及ラインのプライベート・セレクションが2,000円台、ナパ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨンが6,000円〜1万円台、オークヴィルやスタッグス・リープなどの畑限定「エステート」が1.5〜2万円台、最上位の「ザ・リザーブ トゥ・カロン」が3〜5万円です。正規輸入元の定価と市場実勢には開きがあるため、複数の店を比べてください。最初の一本はナパ・ヴァレー・カベルネか、フュメ・ブランがおすすめです。

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最終更新: 2026-08-22 / 監修: Vinotier編集部