ワインガイド Vinotier
VIII
Region Deep Dive — Rhône

ローヌ完全編

一つの川の流域に、まったく違う二つの顔。北の「シラー単一」と、南の「ブレンド」。対照のなかにローヌの奥行きがあります。

産地深掘りシリーズ 第5弾。第3講で素描したローヌを本格的に。キーワードは北=シラー単一・南=GSMブレンド
シラーのぶどう
シラー — 黒胡椒やスパイス、濃い果実味。北ローヌの主役にして、世界中で愛される品種
— Prologue

一つの川、二つの世界北と南でこれほど違う

ローヌ川に沿って南北に長く広がるこの産地は、北部と南部でまるで別のワイン産地です。北は急斜面の畑でシラー単一の優美な赤を、南は広い大地でグルナッシュ主体のブレンドによる豊潤な赤を生みます。第4講ブルゴーニュ(単一品種)と第5講ボルドー(ブレンド)の両方の性格を、一つの産地の中に併せ持っているとも言えます。

北ローヌ

Septentrional — 急斜面
  • 赤はシラー単一
  • 優美・スパイシー・長熟
  • 急斜面の段々畑
  • コート・ロティ、エルミタージュ

南ローヌ

Méridional — 広い大地
  • グルナッシュ主体のブレンド
  • 豊潤・温暖・力強い
  • 丸石(ガレ)の平地
  • シャトーヌフ・デュ・パプ
— Rhône Nord

北ローヌシラー、ただ一つの品種で

急峻な斜面に張り付くように畑が作られ、赤はすべてシラー単一。黒胡椒やスミレ、燻したような複雑な香りと、しなやかで長命な味わいが特徴です。少量の白ぶどうを一緒に醸す伝統もあります。

コート・ロティCôte-Rôtie

「焼けた丘」の意。最北の銘醸地。香り高く優美なシラー。白ヴィオニエを少量加えることも。

エルミタージュHermitage

力強く重厚、長期熟成型。北ローヌのシラーの頂点とされる。

コンドリューCondrieu

白ぶどうヴィオニエの聖地。あんずや花の華やかな香りの白。

クローズ・エルミタージュCrozes-Hermitage

広い産地で手頃。北ローヌのシラー入門に最適。

— Rhône Sud

南ローヌブレンドの豊潤、丸石の畑

温暖な南部では、グルナッシュを主体に、シラーやムールヴェードルなどをブレンド(通称GSM)。果実味豊かで、アルコール感のある力強い赤になります。代表シャトーヌフ・デュ・パプでは、なんと最大13品種の使用が認められています。

南ローヌGSMの典型例
グルナッシュ 60%
シラー
ムールヴェードル
シャトーヌフ・デュ・パプの丸石(ガレ)の畑
ガレ(galets roulés) — シャトーヌフの畑を覆う丸石。昼に熱を蓄え夜にぶどうへ放射し、完熟を助ける
シャトーヌフ・デュ・パプChâteauneuf-du-Pape

南ローヌの王。丸石の畑、多品種ブレンド。豊潤で力強く、温かみのある赤。

ジゴンダス / ヴァケラスGigondas / Vacqueyras

シャトーヌフに次ぐ実力派。同様の力強いブレンド赤を、より手頃に。

コート・デュ・ローヌCôtes du Rhône

広域名の日常ワイン。コスパ抜群で、ローヌ入門の定番。

タヴェルTavel

辛口ロゼの名産地。しっかりした味わいで食事に合う「飲むロゼ」。ロゼ

「教皇の新しい城」 Châteauneuf-du-Pape は中世に教皇庁がアヴィニョンに置かれた時代に由来。フランス初の原産地呼称(AOC)制度の礎を築いた産地としても知られます。

— Recap

川を下り終えて次は日本へ

ローヌは、北のシラー単一南のGSMブレンドという、一つの産地に同居する二つの哲学が魅力でした。入門は、北の個性ならクローズ・エルミタージュ、南の豊潤さならコート・デュ・ローヌから。余裕があれば両方を並べて、シラー単一とブレンドの違いを味わってみてください。

次回はいよいよ足元へ。世界が注目しはじめた日本ワインの産地を巡ります。