ワインガイド Vinotier
VII
Region Deep Dive — Italia

イタリア完全編

フランスが「秩序」なら、イタリアは「多様性」。全20州、数百の土着品種が織りなす、奔放で豊かなワインの大地へ。

産地深掘りシリーズ 第4弾。第3講で素描したイタリアを、ここで本格的に。キーワードは土着品種・全20州・DOCG
キャンティのぶどう畑
キャンティの丘 — トスカーナの象徴。糸杉とぶどう畑が織りなす風景
— Prologue

多様性こそが個性フランスとは違う豊かさ

イタリアワインの特徴を一言でいえば多様性。北は雪を頂くアルプス、南は地中海の島まで、全20州すべてでワインを造る世界でも稀な国です。そして使われる品種の多くが、その土地にしかない土着品種。フランスが国際品種で「型」を作ったのに対し、イタリアは土地ごとの個性を奔放に表現します。

把握のコツは、フランスのように一つの体系で捉えようとせず、「主要な州 × その州の看板品種」で覚えること。まずは二大巨頭、ピエモンテとトスカーナから。

— Piemonte

ピエモンテイタリアの王、ネッビオーロ

北西部、アルプス麓の霧(nebbia)深い丘。ここで育つネッビオーロこそ、イタリア最高峰の赤を生む品種です。淡い色からは想像できない、強烈なタンニンと酸、そして長い熟成能力を持ちます。

ネッビオーロのぶどう
ネッビオーロ — バラやタール、ドライフラワーの香り。色は淡いが、味わいは力強く長命
バローロBarolo

「ワインの王」。ネッビオーロ100%。重厚で長期熟成必須。最低熟成年数も法で規定。

バルバレスコBarbaresco

バローロと並ぶ名酒。同じネッビオーロでより優美・繊細とされる。

バルベーラ / ドルチェットBarbera / Dolcetto

日常の赤。バルベーラは酸が豊かで食事向き、ドルチェットは果実味で軽快。

モスカート・ダスティMoscato d'Asti

低アルコールの甘い微発泡。マスカットの華やかな香り。デザートに。甘・微発泡

— Toscana

トスカーナサンジョヴェーゼの故郷

中部の丘陵地帯。主役はサンジョヴェーゼ——酸とタンニンがほどよく、チェリーやハーブの香りで、料理(特にトマトや肉)に寄り添う万能選手。冒頭のキャンティの風景がまさにこの産地です。

キャンティ・クラシコChianti Classico

サンジョヴェーゼ主体。黒鶏マークが目印。食事に合う親しみやすい赤の代表。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノBrunello di Montalcino

サンジョヴェーゼ100%の長熟高級赤。凝縮感と気品。トスカーナの頂点。

スーパータスカンSuper Tuscan

カベルネ等の国際品種を使う革新派。格付け枠外から世界的評価を得た(例:サッシカイア)。

ヴィーノ・ノビレVino Nobile di Montepulciano

サンジョヴェーゼ系の上質赤。「貴族のワイン」の異名を持つ。

スーパータスカンの反逆 1970年代、当時の格付けに縛られず国際品種で高品質ワインを造った生産者たち。格付け上は最下位「テーブルワイン」扱いでも価格と評価は最高級——制度を変えるほどの衝撃を与えました。

— Veneto & more

その他の主要州北から南まで個性さまざま

ヴェネトVeneto

気軽な泡プロセッコ、陰干し濃厚赤アマローネ、白ソアーヴェ。生産量は国内最大級。

泡/白
アルト・アディジェAlto Adige

アルプス麓の冷涼地。きりっとした高品質な白(ピノ・グリージョ等)。

シチリアSicilia

南の島。土着のネロ・ダーヴォラや、エトナ火山の個性的なワインが近年人気。

アマローネの造り方 収穫したぶどうを数ヶ月陰干しして糖と風味を凝縮させてから醸造。第2講・第5講で触れた「凝縮」の技法を、辛口の濃厚赤に応用した例です。

— Chapter

格付けを読むDOCG / DOC / IGT

イタリアの格付けは、第3講で触れたピラミッドのイタリア版。上ほど産地と造りの規定が厳しくなります。ただしスーパータスカンの例のように、格付けの高さ=品質の高さとは限らないのがイタリアの面白さです。

DOCG統制保証付原産地呼称最上位。厳格な規定+政府の保証。バローロ、ブルネッロ、キャンティ・クラシコなど。
DOC統制原産地呼称産地・品種・製法の規定あり。幅広い銘柄がここ。
IGT地域特性表示より自由度が高い。スーパータスカンの多くは制度上ここ(または地方名)から世界的名声を得た。
— Recap

奔放な大地を歩いて次はローヌへ

イタリアは「一つの型」では捉えられない、土着品種と土地の個性の宝庫でした。まずはピエモンテ(ネッビオーロ)とトスカーナ(サンジョヴェーゼ)の二大巨頭を押さえ、そこから州ごとに広げていくのが王道です。最初の一本は、食事に寄り添うキャンティ・クラシコか、軽快なバルベーラが入りやすいでしょう。

次回は再びフランスへ。北と南で全く表情の異なるローヌ(そしてロワール)を深掘りします。