ワインガイド Vinotier
Grand Vin / 銘醸図鑑

シャンベルタン

Chambertin / フランス・ブルゴーニュ
シャンベルタン・クロ・ド・ベーズの畑と、ダモワ家の小屋
シャンベルタン・クロ・ド・ベーズの畑と、ダモワ家の小屋 / Photo: “Chambertin Clos de Beze vineyard of Domaine Pierre Damoy” by tara hunt, CC BY-SA 2.0(Wikimedia Commons)
ひとことで言うと

ブルゴーニュ・ジュヴレ・シャンベルタン村が誇る赤ワインの最高峰。「王のワイン」と呼ばれ、力強い骨格と数十年の熟成力で知られます。村には9つの特級畑が集まり、頂点のシャンベルタンとクロ・ド・ベーズを、7つの「シャンベルタン」を名乗る畑が取り囲みます。

ブルゴーニュの赤に「王」がいるとすれば、それはシャンベルタンです。コート・ド・ニュイの村ジュヴレ・シャンベルタンの斜面に広がるこの特級畑は、古くから「王のワイン(ロワ・シャンベルタン)」と讃えられてきました。1847年、村は畑の名声にあやかり村名を「ジュヴレ・シャンベルタン」に改名——畑名を村名に取り込んだブルゴーニュ最初の村となり、この流儀は後にピュリニー(銘醸図鑑: ピュリニー・モンラッシェ)など各村へ広がりました。

皇帝が愛した赤

シャンベルタンの物語に必ず登場するのがナポレオンです。側近たちの回想録によれば、皇帝は長年この赤を愛飲し——ただしいつも水で割って——遠征にも運ばせたと伝えられます。豪飲家ではなく、食卓に置かれるのは決まってシャンベルタンだった、という逸話は、この畑の名声を象徴するものとして語り継がれています。

畑の起源はさらに古く、7世紀にベーズ修道院へ寄進された「クロ・ド・ベーズ」にさかのぼります。のちに隣の畑を耕した農夫ベルタンの「シャン・ド・ベルタン(ベルタンの畑)」が縮まってシャンベルタンになった——と語られる、素朴な名前の由来も愛される理由のひとつです。

9つの「シャンベルタン」を整理する

「ここからシャンベルタンが始まる」と記された畑の看板
「Ici Commence le Chambertin(ここからシャンベルタンが始まる)」——畑の境界に立つ有名な看板 / Photo: “Ici commence le Chambertin” by Arnaud 25, CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)

ジュヴレ・シャンベルタン村の特級は9つ——コート・ド・ニュイの村で最多です。頂点はシャンベルタン(約12.9ha)とシャンベルタン・クロ・ド・ベーズ(約15.4ha)。面白いのは名乗りの規則で、クロ・ド・ベーズ産は「シャンベルタン」を名乗れるが、逆はできません

残る7つは、いずれも「〜シャンベルタン」と名を連ねる衛星特級です。シャルム(9つで最も柔らかく、早くから楽しめると評される)、マゾワイエール(シャルムとして名乗れるため、大半がシャルム名義)、シャペル、グリオット(最小・約2.7ha)、ラトリシエール、マジ、リュショット。同じ「シャンベルタン」の名でも、畑ごとに性格が異なります——それを飲み比べるのが、この村の醍醐味です。

さらに、一級のクロ・サン・ジャックにも触れないわけにはいきません。格付けは一級ながら「特級に匹敵する」と評される名畑で、実際に並の特級を超える価格で取引されることもあります。

生産者で選ぶ、という楽しみ

味わいの通説は「力強い骨格、黒系果実とスパイス、そしてジュヴレ特有の燻した肉のニュアンス」。ただしその表情は造り手しだいです。気品のルソー、滋味のトラペ、濃密なデュガ・ピ、みずみずしいフーリエ——下のカードで作風を見比べてください。白の頂点ピュリニーと同じく、「畑で選び、生産者で決める」のがこの村の流儀。基礎からたどるなら第4講ブルゴーニュ完全編をどうぞ。

主要生産者と作風

※各ドメーヌの作風は一般的な評価に基づく傾向です。キュヴェやヴィンテージにより表情は変わります。

村の頂点

ドメーヌ・アルマン・ルソー

Domaine Armand Rousseau

ジュヴレの頂点と広く見なされる名門。シャンベルタン最大の所有者(約2.6ha)で、クロ・ド・ベーズにも大きな区画を持ちます。1930年代からドメーヌ元詰めを先駆けた歴史を誇り、その気品と深みはこの村の理想像と評されます。

1990年に分かれた名家

トラペ/ロシニョール・トラペ

Trapet / Rossignol-Trapet

旧トラペ家の畑は1990年にトラペロシニョール・トラペの両家へ。どちらもシャンベルタン、ラトリシエール、シャペルを受け継ぎ、ともにビオディナミを実践。土地の声を映す滋味ぶかい作風で知られます。

従兄弟の二家

クロード・デュガ/デュガ・ピ

Claude Dugat / Dugat-Py

従兄弟同士の小さな二家。古樹と低収量から、クロード・デュガは端正で貴族的デュガ・ピは濃密で豪奢——と対比して語られます。シャルムやグリオットなど、希少な特級を少量だけ生む職人肌です。

モダンの旗手

ドニ・モルテ

Domaine Denis Mortet

色濃くパワフルな「モダン・ジュヴレ」の代表格として名を馳せ、現当主アルノー・モルテの代からは新樽と抽出を抑えたエレガント路線へ洗練。世代交代で進化を続ける注目株です。

大手の底力

フェヴレ

Domaine Faiveley

ニュイの名門。マジ・シャンベルタンクロ・ド・ベーズ(1930年代の恐慌期に取得した歴史的区画)を擁し、近年は精緻さを増した造りで評価を高めています。特級を比較的見つけやすいのも利点。

古樹のクロ・ド・ベーズ

ブリュノ・クレール

Domaine Bruno Clair

マルサネを本拠に、1912年植樹の古樹を含むクロ・ド・ベーズ約1haを所有。端正で緻密、時間とともに開く古典的な作風で、玄人から厚い信頼を集めます。

クロ・サン・ジャックの雄

フーリエ

Domaine Fourrier

ジャン・マリー・フーリエが低介入・旧樽中心で磨く、みずみずしく純粋なスタイル。1910年植樹の古樹から生む一級クロ・サン・ジャックは、特級に匹敵すると評される看板です。

クロ・ド・ベーズ最大

ダモワ

Domaine Pierre Damoy

クロ・ド・ベーズの約3分の1を占める最大所有者で、シャンベルタン、シャペルも所有。近年はシャンパーニュの名門ルイ・ロデレールによる買収交渉が報じられ、動向が注目されています。

よくある質問

シャンベルタンとジュヴレ・シャンベルタンの違いは?
シャンベルタンは畑(特級)の名前、ジュヴレ・シャンベルタンは村の名前です。1847年、ジュヴレ村が名畑シャンベルタンの名を村名に付け加えました。畑名を村名に取り込んだ、ブルゴーニュで最初の例とされます。村名ワインと特級シャンベルタンでは、格も価格も大きく異なります。
シャンベルタンとクロ・ド・ベーズはどちらが上?
格は同等の特級で、優劣は好みの領域です。通説では、シャンベルタンは力強く堅牢、クロ・ド・ベーズはやや優美でチャーミングと対比されます。規則上、クロ・ド・ベーズ産は「シャンベルタン」を名乗れますが、その逆はできません。
手頃にこの村を体験するには?
まずは村名ジュヴレ・シャンベルタン(約5千円〜)で「燻した肉」と評される村の個性を。次の一歩には、9つの特級で最も柔らかいと言われるシャルム・シャンベルタン、または特級に匹敵と評される一級クロ・サン・ジャックがおすすめです。

最終更新: 2026-07-21 / 監修: Vinotier編集部