「適量なら」が大前提
「赤ワインは体に良い」というイメージの源は、皮由来のポリフェノールです。ただし、その効果が語られるのはあくまで適量の範囲。飲みすぎればアルコールの害が上回り、メリットは帳消しになります。ポリフェノール自体は、果物やお茶など他の食品からも摂れます。
「健康のために飲む」必要はない
近年は、「少量の飲酒でも健康リスクは完全にはなくならない」とする研究も報告されています。つまり、健康増進を目的にワインを飲み始める理由はありません。すでに楽しんでいる人が、嗜好品として適量を味わう——その姿勢がいちばん現実的です。
「フレンチ・パラドックス」が生まれ、見直されるまで
このイメージの出発点は、フレンチ・パラドックスと呼ばれた議論です。フランス人は動物性脂肪の摂取が多いのに心臓病による死亡率が比較的低い——その説明として赤ワインが挙げられ、1980年代から90年代にかけて世界的に広まりました。
その後の研究では、この見方に対して複数の指摘が重ねられています。
| 指摘されたこと | 内容 |
|---|---|
| 他の要因が考慮されていない | 食事全体の内容、運動量、所得や医療体制など、ワイン以外の違いが結果に影響していた可能性 |
| 統計の取り方の問題 | 死因の分類や集計方法の違いが、国際比較の数字に影響していたという指摘 |
| 比較の基準の偏り | 「飲まない人」の中に、病気になって飲むのをやめた人が含まれると、飲む人のほうが健康に見えてしまう |
最後の点は、少量飲酒がもっとも健康によいとするJカーブと呼ばれる考え方への批判としてよく挙げられるものです。現在では、赤ワインだけを取り出して健康効果を説明する語り方は、慎重に扱われています。
いま、国際機関や国が示していること
| 主体 | 示されている内容 |
|---|---|
| 世界保健機関(WHO) | 2023年1月、健康への影響という観点から安全とされる飲酒量は特定できないとする見解を公表。アルコールは国際がん研究機関(IARC)の分類でもっとも高い発がん性の群に位置づけられている |
| 厚生労働省 | 2024年2月公表の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」で、飲酒量を純アルコール量(グラム)で把握することを勧め、生活習慣病のリスクを高める量として1日あたり男性40g以上・女性20g以上を示している |
この二つは矛盾しません。「リスクがゼロになる量は示せない」という認識と、「飲む人が量を把握するための実務的な目安」は、役割が違うからです。
純アルコール量で、自分の飲み方を測る
計算式は「容量ml × 度数% ÷ 100 × 0.8」です。ワインに当てはめると次のようになります。
| 飲んだ量(12%のワイン) | 純アルコール量の目安 |
|---|---|
| グラス1杯(120ml) | 約11.5g |
| グラス2杯(240ml) | 約23g |
| ハーフボトル(375ml) | 約36g |
| フルボトル(750ml) | 約72g |
「グラス2杯」と言えば軽く聞こえますが、数値に直すと印象は変わります。杯数ではなくグラムで見る——これが、いま勧められている考え方です。度数の読み方はアルコール度数の項をどうぞ。
飲まない・控えることも、ひとつの選択
近年は、ノンアルコールワインや低アルコールのワインの選択肢も増えました。飲む量を減らしたい日に、雰囲気だけを楽しむ方法があるということです。
そしてもっとも大切なこととして——お酒に弱い体質の方、妊娠・授乳中の方、持病や服薬のある方、20歳未満の方は、飲まないことが前提です。分解に関わる酵素のはたらきには遺伝的な個人差があり、日本を含む東アジアではアセトアルデヒドの分解が弱い体質の人が一定の割合でいるとされています。これは慣れで変わるものではありません。
ワインは、健康のために飲むものではなく、食卓を豊かにする嗜好品です。この前提を置いたうえで、量と付き合っていく——それがこのサイトの立場です。詳しくは第37講ワインと健康完全編、体調面の話はワインは二日酔いしやすい?、カロリーの話はワインは太る?もあわせてどうぞ。
※本記事は一般的な情報で、医療・健康アドバイスではありません。飲酒は20歳になってから、適量を守って。体質的にお酒に弱い方や、妊娠・授乳中の方、持病・服薬のある方は飲酒を控え、判断は医師にご相談ください。