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World — イタリア・トスカーナ/キャンティ・クラシコ

アンティノリ(マルケージ・アンティノリ)

Marchesi Antinori / 1385年(26代続く名門)
ティニャネロのボトル(アンティノリ)
ティニャネロのボトル(アンティノリ) / Photo: “Tignanello - bottle” by Renzo Grosso, CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)
どんな造り手?

アンティノリ(マルケージ・アンティノリ)は、1385年から600年以上・26代続くフィレンツェの名門。サンジョヴェーゼをバリック熟成しカベルネをブレンドした「ティニャネロ」でスーパータスカン革命を起こした立役者で、カベルネ主体の「ソライア」とともにイタリアワインの常識を変えました。現在は26代目の三姉妹が経営を継ぎ、トスカーナからナパまで版図を広げつつ、非上場の家族経営を守り続けています。

六百年、二十六代

アンティノリの歴史は、1385年にジョヴァンニ・ディ・ピエロ・アンティノリがフィレンツェのワイン職人組合「アルテ・フィオレンティーナ・デイ・ヴィナッティエーリ」に加入したところから公式に数えられています。以来600年以上・26代、家系は一度も途切れていません。公式の家史によれば、一族とワインの関わりはさらに古く、12世紀末にまで遡る記録があるといいます。絹織物や銀行業で栄えた時代を経て、家業はワインへ収斂していきました。「世界で最も古い家族経営企業」の常連として数えられる、フィレンツェの生きた歴史です。

「キャンティを名乗らない」という決断

その長い歴史の中で最大の転換点が、1970年代に訪れます。当主ピエロ・アンティノリは、規定に縛られた当時のキャンティに限界を感じ、本拠テヌータ・ティニャネロの単一畑から新しいワインを造りました。1970年に「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ・ヴィネート・ティニャネロ」として生まれ、1971年ヴィンテージからキャンティの枠を離れて「ティニャネロ」を名乗ったこの赤は、三つの点で先駆でした。サンジョヴェーゼバリック(小樽)で熟成した最初期のワインであること。カベルネという非伝統品種をブレンドしたこと。そして1975年からは、当時のキャンティに義務づけられていた白ぶどうを完全に排除したことです。

格付けの上では「ただのテーブルワイン」。しかし品質は世界を驚かせ、ボルゲリのサッシカイアとともにスーパータスカンという新しいカテゴリーを切り拓きました。1982年以降のブレンドはサンジョヴェーゼ約80%+カベルネ・ソーヴィニヨン15%+カベルネ・フラン5%で一貫しています。もうひとつ特筆すべきは規律です——出来に納得できない年(1972・73・74・76・84・92・2002年)には、ティニャネロは一本も造られていません

陽だまりの区画——ソライア

ティニャネロの畑と同じ丘には、もう一枚の切り札があります。ソライア——イタリア語で「陽だまり」を意味する、最も日当たりのよい約20ヘクタールの区画です。1978年、ティニャネロ用に植えたカベルネが余ったことから半ば偶然に生まれたと伝えられるこのワインは、カベルネ・ソーヴィニヨン主体にサンジョヴェーゼを添える、ティニャネロと鏡写しの構成。1997年ヴィンテージは2000年のWine Spectator年間トップ100で第1位に輝き、これはイタリアワインとして史上初の快挙でした。

畑はいずれもキャンティ・クラシコ地区サン・カシャーノ・ヴァル・ディ・ペーザのテヌータ・ティニャネロ内にあり、標高350〜400メートル、石灰岩と泥灰土の斜面です。ティニャネロの畑は拡張を重ね、現在は約77ヘクタールに及びます。

拡がる版図と、大地に消える本社

現在のアンティノリは、トスカーナの外にも大きく版図を広げています。ボルゲリのグアド・アル・タッソ、モンタルチーノのピアン・デッレ・ヴィーニェ、ウンブリアのカステッロ・デッラ・サラ(白の旗艦「チェルヴァロ・デッラ・サラ」は、マロラクティック発酵とバリック熟成をイタリアの白に持ち込んだ最初期の一本とされます)、ピエモンテの老舗プルノット、プーリアのトルマレスカ、フランチャコルタのモンテニーザ。海外ではナパ・ヴァレーのアンティカを営み、2023年には「パリの審判」の勝者スタッグス・リープ・ワイン・セラーズの完全所有権を取得しました(2007年の共同買収から16年をかけた総仕上げです)。

それでも会社は非上場・家族100%所有のまま。2016年からは26代目のアルビエラ・アンティノリが社長を務め、妹のアレグラとアレッシアが副社長、父ピエロは名誉会長として控えます。同社初の女性トップです。

象徴となる建築もあります。フィレンツェとシエナの間のバルジーノに2012年に開業した新本社「アンティノリ・ネル・キャンティ・クラシコ」は、丘を掘って建物を埋め込み、掘った土で屋根を覆った「大地に消えるワイナリー」。テラコッタと木とコルテン鋼の螺旋階段で知られ、見学路からセラーを見下ろせる、ワイン建築の代表例です。

どこから飲み始めるか

入口は明快です。ヴィッラ・アンティノリやペポリといった数千円台のレンジで、サンジョヴェーゼの酸と樽の均衡というこの家の文法に触れる。そのうえで特別な日にティニャネロ(数万円規模)へ、さらにその先にソライアが待つ、という階段です。同じスーパータスカンでも、海岸のカベルネであるサッシカイアオルネライアと、内陸のサンジョヴェーゼに軸足を置くティニャネロを飲み比べると、トスカーナの地図が立体的に見えてきます。イタリアワイン全体の見取り図は第7講 イタリア完全編で。買い方の実践は第33講が役に立つはずです。

よくある質問

アンティノリとは?
1385年、ジョヴァンニ・ディ・ピエロ・アンティノリがフィレンツェのワイン職人組合に加入した年を起点に、600年以上・26代にわたり続くワイン一族です。キャンティ・クラシコの伝統を担うと同時に、1970年代に「ティニャネロ」を生み出してスーパータスカン革命を起こした、イタリアワインの中心的存在です。
「ティニャネロ」とは? 何が新しかったのですか?
テヌータ・ティニャネロの単一畑から生まれる赤で、1970年に「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ」として初めて造られ、1971年ヴィンテージからキャンティの規定を離れて「ティニャネロ」を名乗りました。サンジョヴェーゼを小樽(バリック)で熟成した最初期のワインであり、1975年からは規定で求められていた白ぶどうを完全に排除。1982年以降はサンジョヴェーゼ約80%+カベルネ・ソーヴィニヨン15%+カベルネ・フラン5%の構成で固定されています。
「ソライア」とは? ティニャネロとの違いは?
同じ丘の最も日当たりのよい約20ヘクタールの区画(ソライア=「陽だまり」の意)から生まれる、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤です。1978年、ティニャネロ用に植えたカベルネが余ったことから半ば偶然に誕生したと伝えられます。サンジョヴェーゼ主体のティニャネロと品種構成が鏡写しの関係にあり、1997年ヴィンテージは2000年のWine Spectator年間トップ100で、イタリアワインとして史上初の第1位に選ばれました。
スーパータスカンとは?
トスカーナで、伝統的なキャンティの規定にとらわれず、カベルネなど国際品種やバリック熟成を取り入れて造られた高品質ワインの総称です。当初は格付け上「テーブルワイン」扱いでしたが、品質で世界を驚かせました。サッシカイアとティニャネロが、その二大先駆とされています。
いま誰が経営しているのですか?
2016年から26代目のアルビエラ・アンティノリが社長を務めています。同社初の女性トップで、妹のアレグラとアレッシアが副社長、父ピエロ・アンティノリは名誉会長です。株式は家族が持ち続けており、非上場の家族経営を守っています。
どんなワイナリー・畑を持っていますか?
本拠のテヌータ・ティニャネロのほか、トスカーナにペポリやバディア・ア・パッシニャーノ(キャンティ・クラシコ)、グアド・アル・タッソ(ボルゲリ)、ピアン・デッレ・ヴィーニェ(モンタルチーノ)など。ウンブリアのカステッロ・デッラ・サラでは白の旗艦「チェルヴァロ・デッラ・サラ」を造ります。ピエモンテのプルノット、プーリアのトルマレスカ、フランチャコルタのモンテニーザ、さらに米ナパ・ヴァレーのアンティカやスタッグス・リープ・ワイン・セラーズまで、版図は海外にも及びます。
ワイナリーは見学できますか?
できます。フィレンツェとシエナの間のバルジーノにある新本社「アンティノリ・ネル・キャンティ・クラシコ」は、2012年に開業した見学を前提に設計されたワイナリーで、丘を掘って建物を大地に埋め込んだ建築でも有名です。セラーを見下ろす見学路のほか、レストランやショップを併設しています。
価格はどのくらいしますか? どこから飲み始めるべき?
入口はヴィッラ・アンティノリやペポリなど数千円台のレンジで、アンティノリの家風を十分に感じられます。ティニャネロは数万円規模、ソライアはさらにその上が目安です(ヴィンテージと市況で変動します)。まず数千円台でサンジョヴェーゼの酸と樽の均衡に触れ、特別な日にティニャネロへ進むのがおすすめです。

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最終更新: 2026-08-22 / 監修: Vinotier編集部