祝杯はシャンパーニュだけのものじゃない。プロセッコ、カヴァ、クレマン、フランチャコルタ——造り方の違いを知れば、世界の「泡」がもっと身近に、もっと楽しくなる。

「泡=シャンパーニュ」と思っていませんか。実はシャンパーニュはスパークリングワインの一種にすぎません。第6講シャンパーニュ完全編で泡の頂点を学んだいま、視野を世界へ広げましょう。プロセッコ、カヴァ、クレマン、フランチャコルタ——造り方と個性を知れば、もっと気軽に、もっと幅広く泡を楽しめます。
把握のコツはたった一つ、「どうやって泡を入れたか(製法)」。これさえ押さえれば、価格も味わいの傾向も読めるようになります。まずは二つの製法から。
スパークリングの泡は、瓶やタンクの中でもう一度発酵(二次発酵)させ、そのとき出る炭酸ガスを閉じ込めたもの。この「二次発酵をどこで行うか」で、味わいも価格も大きく分かれます。

一本ずつの瓶の中で二次発酵させ、澱とともに長く熟成。きめ細かく持続する泡とパン・ブリオッシュの香り。手間がかかり高価。シャンパーニュ・カヴァ・クレマン・フランチャコルタがこれ。
大きな密閉タンクで一気に二次発酵。果実味と花の香りがフレッシュに残り、軽快で手頃。プロセッコが代表。早く・多く・安く造れるのが強み。
「泡の細かさ」と製法 第6講で学んだ瓶内二次発酵は、澱(酵母)と長く触れるオートリーズでうまみと複雑さが生まれます。一方タンク方式は、ぶどう本来のフレッシュな香りを素早く瓶詰めして閉じ込める。どちらが上ではなく、狙いが違うのです。
製法という地図を手に、世界の代表的な泡を見ていきましょう。価格も気分も、選択肢はぐっと広がります。
ヴェネトのグレラ種、タンク方式。青リンゴや白い花のフルーティで軽快な泡。手頃で食前酒の定番。泡・辛口〜
スペインの瓶内二次発酵。トースト香と引き締まった酸。シャンパーニュ製法をこの価格で味わえる驚異のコスパ。泡
シャンパーニュ以外のフランス各地(アルザス・ロワール・ブルゴーニュ等)の瓶内二次発酵。上品で価格も良心的。泡
ドイツの泡。リースリング由来の高い酸を生かした、きりっと爽快なスタイル。第11講ドイツ編でも登場。泡
甲州やデラウェアの軽やかな泡が増加中。和食に寄り添う繊細さが身上。第9講日本ワイン編とあわせて。泡
迷ったら「製法」で選ぶ しっかり複雑な泡が欲しい日は瓶内二次発酵(カヴァ・クレマン)、軽やかに乾杯したい日はタンク方式(プロセッコ)。同じ「泡」でも、選び方の軸が一本通ります。
スパークリングのラベルには、残糖(甘さ)の段階を示す言葉が必ず入っています。辛口から甘口へ、順に並べてみましょう。最大の注意点は、Extra Dry が Brut より「甘い」こと。名前のイメージと逆なので、ここだけは覚えておくと失敗しません。
「甘さ」と「酸」の綱引き 第1講・第2講で学んだ甘味と酸のバランスは泡でも同じ。高い酸が下支えするから、Brutでもキリッと、Demi-Secでもくどくならない。泡の清涼感は、この綱引きの産物です。
しっかり冷やすと泡が落ち着き、吹きこぼれにくい。氷水のバケツなら15〜20分が目安。適温の基本も参照。
コルクは押さえ、瓶を回して「ふっ」と息を抜くように。派手な音と噴き出しは、泡と香りの損失です。開け方。
細いフルートは泡を長く楽しめ、白ワイン型は香りが開く。香り重視なら後者も。グラスの話。
泡は食事の万能選手 高い酸と炭酸が口の中をリセットするため、揚げ物・天ぷら・塩気のある前菜と抜群。食前の一杯としても、最後まで食卓に寄り添えるのがスパークリングの強みです。
スパークリングは「製法(瓶内二次発酵かタンクか)」「各国の個性」「Brutの甘辛」、この三点で驚くほど見通しよく選べます。最初の一本は、軽やかでお手頃なプロセッコか、シャンパーニュ製法をお得に楽しめるカヴァがおすすめ。よく冷やして、静かに開けて、気軽に乾杯を。
次は再び産地深掘りへ。カヴァの故郷であり、テンプラニーリョと熟成の文化が息づく情熱の国——スペイン完全編。日が沈むまで終わらない、豊かなワインの食卓へご案内します。