大西洋に開かれた、土着品種の宝庫。ポートだけじゃない——みずみずしい微発泡白から力強い赤まで、驚きのコスパで楽しむ「食事ワインの国」へ。主役はトゥリガ・ナシオナル。

ポルトガルと聞いて思い浮かぶのは、第15講酒精強化ワインで学んだポートかもしれません。けれどこの国の本当の魅力は、その陰に隠れた「食事ワイン」の豊かさにあります。ポルトガルは200を超える土着品種を擁する宝庫。国際品種に頼らず、この地でしか出会えない個性を、驚くほど手頃な価格で楽しめます。
把握のコツは三つ。「北の微発泡白ヴィーニョ・ヴェルデ」「ドウロの力強い赤」「土着品種の主役トゥリガ・ナシオナル」。お隣の第14講スペインとも通じ合う、大西洋の古豪へ。
北部ミーニョ地方のヴィーニョ・ヴェルデ(緑のワイン)は、若々しくほのかに発泡する軽快な白。アルコールは低め、酸は爽やか、青リンゴや柑橘の香り。暑い日にごくごく進む、夏の定番です。「緑」は色ではなく「若い(フレッシュな)」の意。手頃な価格も大きな魅力です。
かすかな泡と軽さで、食前にも食中にも。魚介やサラダに最高の相棒。白・辛口
単一で造る上級版はコク深く本格的。スペインのアルバリーニョと同じ品種で、国境をまたぐ兄弟。白
国境をまたぐ品種 第14講スペインのリアス・バイシャスで学んだアルバリーニョは、川を挟んだポルトガル側ではアルヴァリーニョ。同じ品種が国境で名前を変える——イベリア半島の一体感を感じる一杯です。
第15講でポートの故郷として登場したドウロ渓谷。実はこの同じ急斜面から、いま世界が注目する辛口の赤が生まれています。片岩(シスト)の痩せた土壌と灼熱の谷が、凝縮した果実と気品ある骨格を与えます。その主役が、ポルトガルの魂トゥリガ・ナシオナルです。

スミレ・黒系果実・スパイス。凝縮感と気品を兼ね備えた、ポルトガル最高の黒ぶどう。赤
複数の土着品種をブレンドした力強くも滑らかな赤。ポートと同じ畑から生まれる新たな主役。赤
世界遺産の段々畑。水はけのよい片岩土壌が、根を深く張らせ凝縮したぶどうを生む。
一つの畑、二つの顔 同じドウロのぶどうが、発酵を止めれば甘いポート(第15講)、最後まで発酵させれば辛口の赤になります。産地の底力を、甘辛の両面から味わえるのがドウロの醍醐味です。
花崗岩土壌の山あいで、エレガントで長命な赤。トゥリガ・ナシオナル主体の「ブルゴーニュ的」な繊細さ。赤
南部の温暖な平原。豊潤で果実味たっぷり、まろやかで親しみやすい。コスパ抜群の赤の宝庫。赤
大西洋岸の産地。バガ種の骨太でタンニン豊かな赤と、伝統的なスパークリングで知られる。赤泡
「和名のない」品種たち トゥリガ・ナシオナル、バガ、カステラン、エンクルザード……聞き慣れない名前こそ、ポルトガルの宝。国際品種では出せない香りと味わいが、この国には200種以上も眠っています。冒険しがいのある産地です。
品質のわりに手頃な価格帯が多く、「掘り出し物」の宝庫。日常の食卓を格上げしてくれる。
土着品種ゆえ、どこにもない香りと味。国際品種に飽きた人ほど新鮮に響く。
鮮やかな酸と親しみやすい果実味は、魚介から肉料理、和食まで幅広く対応。
まずは二本から 夏はよく冷やしたヴィーニョ・ヴェルデ、じっくり飲むならドウロやアレンテージョの赤。この二本で、ポルトガルの「軽やかさ」と「力強さ」の両極を、手頃に体験できます。
ポルトガルはヴィーニョ・ヴェルデの微発泡白・ドウロの力強い赤・トゥリガ・ナシオナルという主役、この三点で見通せます。ポートで知られるこの国は、いま「食事ワインの宝庫」として再発見されつつあります。土着品種の名前は難しくても、飲めば分かる個性とコスパ。臆せず一本、手に取ってみてください。
ヨーロッパの主要産地を一巡しました。次は大西洋を渡り、アンデスの高地へ。標高が生む鮮烈な果実味——チリのカベルネ/カルメネール、アルゼンチンのマルベック。チリ&アルゼンチン完全編で、南米の実力派をご案内します。